復興文化論 日本的創造の系譜 の感想

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参照データ

タイトル復興文化論 日本的創造の系譜
発売日販売日未定
製作者福嶋亮大
販売元青土社
JANコード9784791767335
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 評論・文学研究 » 日本文学研究

購入者の感想

花田清輝「復興期の精神」を意識したと思しきタイトルからわかるように、戦乱や震災のあとを絶望一色で捉えるのはやめようというメッセージに貫かれた作品。
古代から中世、そしてあの戦争の「後」の文化的興隆を通観する著者。ときにケオティックな中で、文化は爛熟する。
もくじを見ればわかるとおり、その扱う対象は縦横無尽で、著者の博覧強記、あるいは宣言的知識(顕示するための知識)へのこだわりを思わせる。

ただ、上のテーゼを披瀝するだけであれば、特に目新しさはないかもしれない。
評者としては、著者には「もうあと一歩」の叙述的工夫を期待したかったように思える。
それは、以下のような点からも感じられたことであった。

第一に、叙述の形式がいくぶん中途半端である。
学術書の匂いや形式を捨てきれておらず、ごくしばしば晦渋な表現や持って回った言い回し、過剰な記述に出逢う。
でも、これは著者の持ち味だし、記述に誠実にありたいという表れかもしれない。
それでも、働き人が通勤の電車で読むのは堪えるだろう。
対象読者に大卒のサラリーマンを想定していたのであれば、今一歩「こちらの世界」へ足を踏みおろしてほしかった。

第二に、本書でとりわけ筆が冴えていると思われたのは、第3・4章のセットである。
著者の専門は中国文化論であるから、その冴えは当然だろう。
中国の各王朝の「遺民」が残した放埒な文化が、「亡国」を経験したことのない江戸期の日本にも大きな影響を与えた。
日本の近世のナショナリズムは、そうした中国の「遺民」の文化によるところ大だと著者はいう。
こういうの、好きです(笑)。
こと記述に関しては、水滸伝や、太平記の需要のされ方のくだりなんか、とにかく筆が踊っていry。
ただ、それだけに、他の章を中心として、第一で挙げたような晦渋な表現が目立ってしまうのであった。
(※なお、この二つの章でしばしば用いられる「中国化」を中心として、與那覇潤「中国化する日本」と対照しながら読んでみた。

福嶋さんの本は、『神話が考える』を前に読んだことがあったが、その時は(私の本分野の理解が浅かったせいか)これほど読みやすかった記憶はない。本書は、復興文化論というタイトルを冠しているが、復興をキーワードに日本の文学史を(中国の文学史との関係を読み解きながら)振り返るところにかなりの紙面が割かれていると感じた。万葉集、古今和歌集、空海、源氏物語、平家物語、川端康成、太宰治、三島由紀夫に村上春樹まで。このあたりは概説として読むだけでもかなり面白かった。

後半になるにつれて、筆者があとがきでいうところの『過去の私的な復興』の様相がつよくなり、福嶋さん個人の情熱が伝わってきた。本書を読み終わると、筆者の情熱にあてられて過去の文学を読みたいなという想いがわいてきた。そして、また未来の文学へ期待する気持ちもでてきたように思う。

分厚い本らしいが、iPhoneのKindleアプリで移動中に読むことができたので、大変助かった。分厚い本ほど、こうしてKindle対応してもらえると助かりますね。

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