マンガでわかる有機化学 の感想

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有機化学を駆使して天然物の香気化学を精力的に研究している先生の著書だけあり、有機化学の実力が身につく実践的な本。本書は有機化合物の構造、性質、反応のほぼ３本柱に絞って書かれているといってよく、命名法、立体異性体、各種求核置換反応など、各種試験などで問われやすい部分に絞って親切に解説されている点で他に類を見ない。

本シリーズとは別に、マンガをつかったり、大学１、２年生を対象にした有機化学の類書が数種あるが、扱われる範囲が広範囲であったり、逆に説明が簡略すぎてわかりにくさを感じる一方、本書は有機化学を使って何かをしようとしている人に、これだけは重要といった部分に専門家がマトを絞ってわかりやすく書いた本である。

本書は主にマンガの部分とフォローアップ部分とで構成されるが、「マンガでわかるシリーズ」の他書よりもやや趣を異にし、フォローアップ部分ではより専門的、実践的な内容が文章解説で記述され、マンガの部分では高校化学や基礎化学的な分野に近い有機化学が扱われており基礎固め的な役割を果たしている。このため、マンガを読むつもりで全体を通して読もうとすると、フォローアップの解説部分がしっかり書かれている分、戸惑うかもしれない。

化学に不安の人はまずマンガだけを全体を通して読んで有機化学に必要な基本や約束事を復習し、その後、フォローアップを読むことを勧めたい。一方、ある程度基礎ができている人は、仮にマンガにたよらずともフォローアップだけを読んでも有機化学の実践的な知識が身につくはずである。したがって、一通り読み終えた後、ざっと復習したい場合も、マンガのコマ送りに煩わされることなく、フォローアップをざっと読めば有機化学のエッセンスを復習できるという利点が本書にはある。

有機化学の重要な柱を即座に復習できるメリットは時間のあまりない人にはありがたい。すなわち、有機化学が苦手であるものの、各種大学編入試験・大学院試験のための基礎固めや有機化学を使って様々な応用科学の道の進みたい人に本書は有用と感じる。

香りを探究する著者ならではのコラムの話題も生活に密着していて楽しい。