パンク侍、斬られて候 (角川文庫) の感想

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参照データ

タイトルパンク侍、斬られて候 (角川文庫)
発売日販売日未定
製作者町田 康
販売元角川書店
JANコード9784043777037
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » 歴史・時代小説

購入者の感想

 最初、「何だ、これは?」と思った。帯には時代小説と書いてあるのに、登場人物のしゃべり方、話す内容は全部現代なんだもの。頭混乱状態のまま読むうちに、やめられなくなってしまった。で、読み終わったら、なぜか私、元気になってた。
 町田康の書く人物って、いろんな意味の自堕落野郎ばかりなのに、それぞれの立場でそれぞれの思想を持ってる。常識的に見ると、こんなふざけた考え方、アリか?バカバカしいと思うのだけど、反論できず、そのうち、そうだよなあと共感し、さらには、まあ、私が現実に直面しているちまちました問題などどうでもいいかと思ってしまう。
 この人の作品、語り口やら考え方やら、抗っていても洗脳されるンです。何か私も腹ふりたくなってきた。
 そうそう、蛇足ですが、表紙の町田康が大好き。こんなん書きながら実はナイーブ。そのギャップがたまらないって感じで。

駄洒落やスラングまで駆使する独特の言語感覚、テンポの良い会話、痙攣的饒舌、スラップスティックな笑い。どれを取っても町田康の個性は際立っている。

『パンク侍』は作者が初めて執筆した時代小説である。時代小説を執筆する時、作家は現在の常識なり価値観を過去に投影しがちである。どうしても江戸時代の武士を現代のサラリーマンのように描いてしまうのである。本書はそういった時代小説の弱点というかいかがわしさを逆手に取り、江戸時代の武士が「マジ汚ねぇよ」と言うわ、ビートルズの「イマジン」は登場するわと、完全に開き直って現代風俗を活写している。その心意気やよし。

本作の前半は登場人物の紹介を兼ねる形で、各々の立場と思惑を丁寧に語っていく。その諧謔と諷刺に満ちた人物描写がマジ笑える。後半は事態が急変し、疾風怒濤の展開。作中世界は加速度的にエントロピーを増大させ、悪趣味と狂気が蔓延していく。この周到に計算された支離滅裂な暴走は凄い。

ピカソの絵が素人目には子供の落書きのごとく映ることがあるように、本作も一歩間違えると中学生が書きなぐった創作作文になりかねない代物である。駄作へと落ち込むギリギリのところで踏みとどまり、全体を絶妙な按配で処理するところにこそ、町田康の天才がある。

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