日本映画史110年 (集英社新書) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル日本映画史110年 (集英社新書)
発売日2014-08-12
製作者四方田 犬彦
販売元集英社
JANコード9784087207521
カテゴリジャンル別 » エンターテイメント » 演劇・舞台 » 演劇

購入者の感想

本書は「日本映画史100年」(2000年刊行)の14年後に書かれた増補改訂版である。著者は冒頭に「新たに2000年以降の日本映画の動向について補足」し、「細部の記述に若干の改訂を試みた」と記している。旧作を愛読した者として興味深く本書を読んだ。

「若干の改訂」のなかに、「後書」の次のような驚くべき(?)改訂があった。

旧作「映画の研究の根底には、つねにノスタルジックな衝動がつきまとう。田中純一郎から飯島正、岩崎昶まで、これまで日本映画の書物を手掛けてきた先達を見ると……」
改訂版「映画の研究の根底には、つねにノスタルジックな衝動がつきまとう。田中純一郎から飯島正、蓮實重彦まで、これまで日本映画をめぐる書物を手掛けてきた先達を見ると……」

旧作「岩崎昶」は今回「蓮實重彦」に置き換えられた。この変更は「若干の改訂」のように見えて、実はかなり奥行きのある変更に見える。
四方田氏がこれまで蓮實氏をことあるごとに批判してきたことは周知のことである。もっとも、声高に批判してきたわけではなく、場合によってはさりげなく指摘するという形を取っていた。映画観の違いといえばそれまでだが、学生時代からの他人にはあずかり知らぬ経緯もあるのかもしれない。「先生とわたし」にも蓮實氏は感じの悪い人物として登場する。しかし、蓮實氏の名前はめったに四方田氏の著作には登場しないので、今回の後書はひとつの驚きであった。

四方田氏に何か心境の変化があったのだろうか。
これまでのことは不問に付し、蓮實氏の映画評論に対する功績を虚心に評価する、というのがありうる解釈であろう。映画評論の両雄たる蓮實・四方田両氏がお互いに無視しあう図はこれまでも不思議な光景であった。大人げないとすら思えた。それを四方田氏が一方的に解消しようとしたのだろうか。あるいは「蓮實の時代」は終わったとするひとつのアピールとも解釈できないこともない。先達として名を挙げた田中純一郎、飯島正、岩崎昶はいずれも故人であり、蓮實氏のみが現存の人物だ。その人物を先達枠に入れることで、「蓮實の時代」を名実ともに終わらせることを意図したのだろうか。
いずれにせよ興味深い改訂であることは間違いない。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

日本映画史110年 (集英社新書)

アマゾンで購入する
集英社から発売された四方田 犬彦の日本映画史110年 (集英社新書)(JAN:9784087207521)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.