ようこそ、わが家へ (小学館文庫) の感想

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参照データ

タイトルようこそ、わが家へ (小学館文庫)
発売日2013-07-05
製作者池井戸 潤
販売元小学館
JANコード9784094088434
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

購入者の感想

非常に読み応えのある作品。銀行から中小企業の総務部長へと出向させられた生来気弱な主人公を中心とした多彩な色彩を持つ物語。一気読みしてしまった。まずは、主人公の駅のホームでのささいなトラブルをキッカケに、理不尽なストーカー的嫌がらせを受ける家族の苦悩・恐怖が物語の軸となる。なまじホラー(のみ)を意図していない分、読む者にも怖さがジワジワと滲んで来る。今の世相では、誰もが経験し得るトラブル、誰もが味わうかも知れない"匿名"の攻撃者による脅威を巧みに扱っている。そして、家族は才気煥発な長男を中心に一致団結して、この"匿名"の攻撃者に立ち向かう。"家族再生"をテーマとした一種の家族小説ともなっているのだ。特に、主人公の少年時代の回想を時折り挟む等、家族のあり方を重層的に模索している辺りは作者の力量と言えよう。

一方、本作は企業小説でもある。主人公は社内の不正に気付き、それを暴こうとするのだが、銀行からの出向者という(周囲から見た時の)立ち位置の不確かさや負い目等も手伝い、この面でも苦闘する。それだけではなく、社内派閥、取引関係の難しさ、中小企業が陥りがちな資金繰りの苦しさや特定の人材への依存性等が丹念に描かれている。その中で、主人公を助ける有能な経理ウーマン摂子の存在がひときわ異彩を放っており、この部分でのヒロインと言っても良い。そして、この不正問題の解決に関しても、背景も含めて、非常に丹念に描かれているのである。

ストーカー的犯罪の解決に捻りが利いている辺りは、ミステリ作家としての作者の力量だが、本作の一番の読み所は、主人公が、「名のない人間であっても、人生を必死に生きているし、この世はそうした人間で構成されている」と悟るラストであろう。人生の応援歌ともなっているのである。様々なテーマを巧みに織り込んだ秀作だと思う。

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