キャラ化する/される子どもたち―排除型社会における新たな人間像 (岩波ブックレット) の感想

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タイトルキャラ化する/される子どもたち―排除型社会における新たな人間像 (岩波ブックレット)
発売日販売日未定
製作者土井 隆義
販売元岩波書店
JANコード9784000094597
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

購入者の感想

 著者によると、延々と経済停滞が続く現代の日本では、未来は現在の延長でしかありえず、今の日常が限りなく続いていくだけ(p.32)だから、人もそこでは成長(変化)せず、生来的なもの(生まれもった素質)が重要で、努力(後天的なもの)は大勢を変えず、異質な他者との出会いなど避けるべき(危険で迷惑なだけ)と考えられている。これは排除型社会であり、子どもたちの生活もそれに対応したものとなっている。
 今の学校のクラスには一体感がなく、子どもたちは小さく分かれたグループのなかで日常生活を営み、格や身分が違う他のグループとは交友関係を避ける。これがスクール・カーストであり、違うカーストは圏外であり(敵でさえなく)、関心はグループ内にのみ向かう。
 子どもたちの交友関係はフラット化し、対等でない「上から目線」は嫌われ、摩擦のない「優しい関係」が求められるのだが、そのためコミュニケーション能力こそ(だけ)が重要となり、この能力が(逆説的だが、それゆえ強力な)序列化をもたらす。グループには変化(成長)が想定されず、成員は固定した役(キャラ)を演じ、このキャラの管理には先の能力が拘わり、特有のいじめも生ずる。キャラは、特定の物語を背後に持つ(成長も可能な)キャラクターから変容した、どんな物語にも使い回せる(物語性を背負わず成長しない)プロトタイプを示す。ケータイなどのネット環境が、この身近で同質なつながりをさらに強める(時空を超え異質な人とつながれる技術が生み出した、逆説として)。

 著者は、このような排除型とは違う、包摂型(共生)社会に向け、異質な他者と出会うことの大切さを終章で説いている。しかし、「延々と経済停滞の続く」消費社会化した日本のあり方が変わらない限り、それは難しいのではないかとまずは思えた。
 だが、今や「未来は現在の延長でしかありえず」と軽々しく言えないとも感じた。非正規雇用(や失業)の増加は、所得の水準(つまりは、私たちの暮らし)について、「未来は現在の延長」が成り立たないことを示すのではないか。つまり、現在の日本は延長(永続)しない。更に今回の震災(と原発事故)も影響をもたらすだろう。変化しないことを前提に維持される「スクール・カースト」は、必然的に(好転するか問題だが…)変容していくと思えた。

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