深い河 (講談社文庫) の感想
参照データ
タイトル | 深い河 (講談社文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 遠藤 周作 |
販売元 | 講談社 |
JANコード | 9784062632577 |
カテゴリ | 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » あ行の著者 |
購入者の感想
人物描写が図式的との批判もありますが, 遠藤の生涯の宿題であった「日本人-愛-神」への
最終的な答えとなる作品です。彼が傾倒していたフランスのノーベル賞作家F.モーリヤックの影響も深く見られます。『沈黙』『死海のほとり』『哀歌』等,一連の作品で描いてきた,華々しい救世主としてのキリストではなく,旧約聖書『イザヤによる預言』にある通り,「みじめで
威厳のない」,人間の病を負ったキリストとしてイエスを見事に描いており,画期的です。神父や妻を失った夫,無神論を自負する女性などキリスト教とは無縁の世界に生きる人間と神との関わりを「愛」とはどうすることかを追求することによって描いています。遠藤の集大成ということもあり,この一冊を読んだだけでは彼独特のたとえ話にあるメッセージを見逃してしまうかもしれません。『深い河』!を読む前でも後でもいいので,彼の代表的作品群を読むことをお勧めします。一冊の中でメッセージを伝えきれない,という点では不完全な作品とも言うことができます。彼の作品のみならず,比較の対象とされ,遠藤が憧れを抱いていたグレアム・グリーンの小説も読んでみるのも一興だと思います。
最終的な答えとなる作品です。彼が傾倒していたフランスのノーベル賞作家F.モーリヤックの影響も深く見られます。『沈黙』『死海のほとり』『哀歌』等,一連の作品で描いてきた,華々しい救世主としてのキリストではなく,旧約聖書『イザヤによる預言』にある通り,「みじめで
威厳のない」,人間の病を負ったキリストとしてイエスを見事に描いており,画期的です。神父や妻を失った夫,無神論を自負する女性などキリスト教とは無縁の世界に生きる人間と神との関わりを「愛」とはどうすることかを追求することによって描いています。遠藤の集大成ということもあり,この一冊を読んだだけでは彼独特のたとえ話にあるメッセージを見逃してしまうかもしれません。『深い河』!を読む前でも後でもいいので,彼の代表的作品群を読むことをお勧めします。一冊の中でメッセージを伝えきれない,という点では不完全な作品とも言うことができます。彼の作品のみならず,比較の対象とされ,遠藤が憧れを抱いていたグレアム・グリーンの小説も読んでみるのも一興だと思います。