ナショナルジオグラフィック プロの撮り方 創造力を極める (ナショナル ジオグラフィック プロの撮り方) の感想

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長年にわたって写真教室を開いてきた著者が、撮影チャンスを見つけ、逃さない写真家の目の鍛え方を解説する。
レンズを通した見え方を心に刻み込んで、撮影地を肉眼でみただけでカメラを構えたらどう見えるかイメージできるようにするとか、
デザイン要素として、線、形、立体感、質感、パターンとか、色の特徴とか、印象的な写真にするために注目すべきことを指摘する。
ところどころに、上達のための演習が載っていて、実践しやすく工夫されている。

ただし、注意が必要なのは、著者の写真へのスタンスは、ナショジオ的な雰囲気ではない。
プロフィールを見ても、有名な写真教室講師であっても、ナショジオとは関係ない写真家だろうということだ。原書の版元はナショジオではない。
著者の写真は、被写体が意味と切り離されて、視覚的な面白さだけが判断基準となっているものが多いように見える。
かつての「プロの撮り方」シリーズでは、ポートレートは相手をよく理解して相応しい写真を撮るようアドバイスしていたが、本書は、人物と背景の組み合わせの妙味だけに注目している。
それは、写真教室で実験的に撮影した作例だから、仕方がないのかもしれない。自分がポートレートを撮るときに、相手に相応しく組み合わせを考える助けと考えるべきかもしれない。

看過できないのは、著者は、写真の演出肯定論を展開して、ロベール・ドアノー「パリ市庁舎前のキス」がやらせだったと批判を浴びたことに対して擁護するのだが、しかし、演出写真をスナップだと言って発表してはいけないだろう。
ナショジオは、少数民族の生活なんかを特集するが、このレベルの「演出」をしていたら信頼を失うのではないだろうか。
そこは、著者と報道系のナショジオのスタンスの違いとして感じる。