ある夢想者の肖像 の感想

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参照データ

タイトルある夢想者の肖像
発売日販売日未定
製作者スティーヴン・ミルハウザー
販売元白水社
JANコード9784560084670
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学

購入者の感想

 視覚対象をこれでもか、と細密画のように緻密に描写する著者の筆力に感嘆する。
読者は、読み終えるまで「集中力」と「忍耐力」を維持するよう要求される。決して、
中途で投げ出さないで欲しい。著者の観察力、描写力、構成力に感激するところがある
からだ。主人公の思い出、記憶、心理、妄想、夢、幻覚など、繊細で精緻な描写を楽し
もう。しかし、丁寧に読了するにはシンドイ作品であることは否めない。
 プロットらしきものはないし、物語として強弱がある作品でもない。ひたすら、主人
公の視点に先導されていく以外にない。読者として、想像力を発揮する前に著者がすべ
て詳細に開示してくれる。

 「人生二十九年の今日この日、夢見る青春の旅に乗り出す」と語り手は、話の口火を
切る。主人公のアーサー・グラハムである。彼の視点で、六歳から高校生までの「青春」
を、家族、学校の友人関係のなかで語る。両親、伯父夫婦、その娘と、「分身」と称す
る二人の友人およびガールフレンドが中心登場人物である。

 アーサーは「退屈だ」「落ち着かない」「疲れる」「よく眠れない」が口癖で、いわゆ
る青春時代特有のアンニュイの状態である。勉強には励み、家族と友人たちとピクニック
や湖で水泳を楽しみ、たわいない話に興じ、ピノクル(カードゲーム)をする。
 第一の分身、ウイリアムは「いつもしかめっ面」をし、「話すことなんて何もないさ」
と云いながら、アーサーとピンポン、バドミントン、モノポリ(ボードゲーム)をする。
 第二の分身、フィリップの好む観念は「小説と自殺とのひそかな親近性」で、『ポー著
作集』や『スチーブンソン全集』などを読みこなしている。屋根裏部屋に金髪の人形の頭
部や頭のない人形が転がっている不思議な空間をもっている。
 ガールフレンドのエリナーは病弱で、学校の「不在の席」でアーサーの興味をひく。次
第に「エリナーの世界がもう一つの世界を流し去りつつある」と彼女に強く魅かれていく。
彼女のクローゼットの奥にある「人形の家」も不思議な隠れ部屋で、そこで、アーサーと

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