色を奏でる (ちくま文庫) の感想
参照データ
タイトル | 色を奏でる (ちくま文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 志村 ふくみ |
販売元 | 筑摩書房 |
JANコード | 9784480034328 |
カテゴリ | 本 » ジャンル別 » 文学・評論 » エッセー・随筆 |
購入者の感想
志村ふくみさんのエッセイが好きです。
自然の色彩に歓喜させられる姿に感動します。
草木花との関わりを、こんなに綿密に語る方は他にはいないのではないでしょうか。
瑞々しい発想の芽生えがどこからくるのか、真摯な言葉、生き方に背筋が伸びる思いがします。
自然の色彩に歓喜させられる姿に感動します。
草木花との関わりを、こんなに綿密に語る方は他にはいないのではないでしょうか。
瑞々しい発想の芽生えがどこからくるのか、真摯な言葉、生き方に背筋が伸びる思いがします。
染織という仕事の醍醐味、深みが、美しい日本語にのせられて、じんわりとこちらの心に沁み入ってくるような好著だ。そして何より、著者の志村さんが、おそらく我々の多くとはまったく異なる価値観のもとで生きておられることに驚かされる。
まず彼女は、自然と対峙するにあたって、みずからの身を「主」に据えたりはしない。一貫して、植物から機械的に色を取り出すのではなく、色をいただく、という姿勢。
数十年にわたり、染織作家として第一線で活躍しつづけているというのに、そしてそれを可能にしている彼女の類稀な才能、感性はきっと誰もが認めることであろうに、彼女自身はほんとうに謙虚だ。あくまで自分は草木の命の一端をいただいて、「いつでも素材がそこでやすらいでいられるように」手を携えているに過ぎない、と。
さらに、彼女も忙しくしてはいるものの、おそらく多くの私たちとは忙しさの質がちがう…ストレスを溜めながら、意に沿わないノルマに追われるような忙しさではない。糸の艶のわずかなちがいに、ひとつひとつの色が背負ういのちに心を寄せ、きこえてくる草木の声を、衝かれたように織物の上にのせていく。彼女が「仕事が仕事をしている」と表現するところの、草木や糸と渾然一体となった忘我の境地における、忙しさである。
ここまで我を張らず、またここまでちがった時間の過ごし方をしている女性が、まだ日本におられるのだ!と、一人の女性の生き方としても目から鱗が落ちる一冊である。
まず彼女は、自然と対峙するにあたって、みずからの身を「主」に据えたりはしない。一貫して、植物から機械的に色を取り出すのではなく、色をいただく、という姿勢。
数十年にわたり、染織作家として第一線で活躍しつづけているというのに、そしてそれを可能にしている彼女の類稀な才能、感性はきっと誰もが認めることであろうに、彼女自身はほんとうに謙虚だ。あくまで自分は草木の命の一端をいただいて、「いつでも素材がそこでやすらいでいられるように」手を携えているに過ぎない、と。
さらに、彼女も忙しくしてはいるものの、おそらく多くの私たちとは忙しさの質がちがう…ストレスを溜めながら、意に沿わないノルマに追われるような忙しさではない。糸の艶のわずかなちがいに、ひとつひとつの色が背負ういのちに心を寄せ、きこえてくる草木の声を、衝かれたように織物の上にのせていく。彼女が「仕事が仕事をしている」と表現するところの、草木や糸と渾然一体となった忘我の境地における、忙しさである。
ここまで我を張らず、またここまでちがった時間の過ごし方をしている女性が、まだ日本におられるのだ!と、一人の女性の生き方としても目から鱗が落ちる一冊である。