ローマ人の物語 (7) 悪名高き皇帝たち の感想

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参照データ

タイトルローマ人の物語 (7) 悪名高き皇帝たち
発売日販売日未定
製作者塩野 七生
販売元新潮社
JANコード9784103096160
カテゴリ歴史・地理 » 世界史 » ヨーロッパ史 » ヨーロッパ史一般

購入者の感想

なんと全部で500頁。奥付によると9月30日の発行。この頃の作者は本当に絶好調・のっていたんだなあ、という感慨を持ちます。本書はある意味、本シリーズの白眉といって過言でない大傑作。第2代皇帝ティベリウスから第5代ネロまで、悪帝と呼ばれた皇帝たちの再評価に取り組み、私がこれまで知らなかった優れた統治者としての一面に光をあててくれます。なかでも、ティベリウス帝とクラウディウス帝。前者に関しては遠い昔に観た映画カリギュラのイメージが微かに頭に残っていて、それまで変態じじいという印象しかなかったのですが、彼の卓越した統治能力、責任感があってこそ、ローマ帝国は磐石になったことが本書でよくわかりました。しかし、閉鎖的な性格ゆえに、ローマから「家出」してカプリ島で執務を行うようになってしまいます。見捨てられたと思ったローマ市民から嫌われたのが、後の悪帝たる評価を作ってしまった原因。つくづくリーダーとは難しいものだと思います。作者は、ティベリウス帝の章の最後で、ローマ皇帝の中で誰よりもティベリウスに共感をいだくという故高坂正堯教授のコメントを紹介し、この章を教授に捧げています。感動的です。それだけ作者はティベリウス帝に思い入れがあるのでしょう。しかし、閉鎖的な性格・人間嫌いという、あまりに人間的な弱点を持っていた点も事実。同じような性格だと自覚している私にとって身につまされる話でした。

クラウディウス帝の場合は、その人間的な弱点はコミカルと言えるほど。しかし、多くのインフラ整備の着手や、秀逸な開国路線の選択など、後のローマの「賢帝の世紀」への布石を敷きます。最後には毒殺され、その葬儀でも茶化される等、最後まである意味哀れさから逃れることはできませんでしたが、作者の「アウグトゥスならば,,断罪などはしなかったであろう」という評価は、気まじめに皇帝としての責務を果たした帝への最高のはなむけの言葉と言えるでしょう。

とにかく、本書はリーダーとその人間性の関係について深く考えさせてくれる、一押しの良書です。

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新潮社から発売された塩野 七生のローマ人の物語 (7) 悪名高き皇帝たち(JAN:9784103096160)の感想と評価
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