世界の文字の図典 普及版 の感想

古今東西、全世界のありとあらゆる文字に関して"日本語で読める解説本(図鑑)"として本書はダントツですね。手書きの図版(約1200点！)が盛り沢山でページを眺めるだけでも楽しい本です。文字の系統と変遷が一目で分かるように工夫もされています。文字の読み方・使われ方などの分かっているものは実例を載せていますし、消滅した古代文字は解読に至る経過も簡潔明瞭に解説されています。
ローマ字は字体の変遷・名称・綴り字の読みをヨーロッパの各国語ごとに解説しているのは凄いです。今まで単なる記号にしか見えなかったアルファベット(ギリシャ文字, ローマ字, キリル文字)も、その起源まで分かると、親しみも湧いてきますね。
中近東〜中央アジア〜東アジアの文字も勿論網羅しています。特に漢字の変遷も多くの実例で表示しているのは凄いです。主要3297字について漢字の変遷(甲骨文字〜楷書・行書・草書)、活字体(正字(繁字体)、簡体字、当用漢字)、および 文字の読み方(中古音、現代音(ウェード式、ホウ音)、広東音、ヴェトナム音、朝鮮音、日本音(漢音・呉音、訓読み))を隈なく載せる念の入れようには脱帽でした。

本書を眺めていると、大英博物館の展示物/解説が手の平に載っているかのように感じられます。(^-^) 実際 大英博物館で販売されている「図説 文字の起源と歴史 ― ヒエログリフ、アルファベット、漢字」(の英語版原著)とは また違った詳しさが本書にはあります。普及版になって原著に比べかなり廉価になったこともあり、実際に購入してみて大変満足しています。