評論集 滅亡について 他三十篇 (岩波文庫) の感想
参照データ
タイトル | 評論集 滅亡について 他三十篇 (岩波文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 武田 泰淳 |
販売元 | 岩波書店 |
JANコード | 9784003113417 |
カテゴリ | 文学・評論 » エッセー・随筆 » 日本のエッセー・随筆 » 近現代の作品 |
購入者の感想
「司馬遷の『史記』は殺人の記録である」という武田泰淳は『司馬遷』を書いた。この思想の上に立って「滅亡について」次のように述べ、人類の歴史は滅亡の歴史だとする。。
「戦争によってある国が滅亡し消滅するのは、世界という生物の肉体のちょっといた消化作用であり、月経現象であり、あくびでさえある。世界の胎内で数個あるいは数十個の民族が争い、消滅しあうのは、世界にとっては、血液の循環をよくするための内臓運動にすぎない」
しかし、また次のようにも言っていることに注意しなければいけない。そこから文化を生むにはその変化の中にも「非滅亡たる一線」がなければならないとする。それを積極的に肯定していかなければならないとする。しかし、今後それが許されるであろうか。近代戦争の性格が、ますます全的滅亡に近づけてゆく傾きにある今日、突然変異に似た人類の破滅の起こりうることを憂慮する。
その時、ヒューマニズムがどれだけの働きができるであろうか。日本の文化人はそれどう対処していけるであろうか、心もとないことである。
生涯、文学者としていかに社会と関わるかを追求した文学論の精髄31編が収められている(雅)
「戦争によってある国が滅亡し消滅するのは、世界という生物の肉体のちょっといた消化作用であり、月経現象であり、あくびでさえある。世界の胎内で数個あるいは数十個の民族が争い、消滅しあうのは、世界にとっては、血液の循環をよくするための内臓運動にすぎない」
しかし、また次のようにも言っていることに注意しなければいけない。そこから文化を生むにはその変化の中にも「非滅亡たる一線」がなければならないとする。それを積極的に肯定していかなければならないとする。しかし、今後それが許されるであろうか。近代戦争の性格が、ますます全的滅亡に近づけてゆく傾きにある今日、突然変異に似た人類の破滅の起こりうることを憂慮する。
その時、ヒューマニズムがどれだけの働きができるであろうか。日本の文化人はそれどう対処していけるであろうか、心もとないことである。
生涯、文学者としていかに社会と関わるかを追求した文学論の精髄31編が収められている(雅)