近代中国史 (ちくま新書) の感想

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参照データ

タイトル近代中国史 (ちくま新書)
発売日販売日未定
製作者岡本 隆司
販売元筑摩書房
JANコード9784480067241
カテゴリ歴史・地理 » 世界史 » アジア史 » 中国史

購入者の感想

本書のあとがきにもある『日本の中国学は世界一の水準、歴史ももちろん例外ではない』という表現には、幾分か専門研究者の気負いが含まれているにしても、恐らく実態からかけ離れていることはないと思います。古くは内藤湖南・宮崎市定・村松祐次先生といったビッグネームから、(著者のような)最近年の精力的な研究者達の業績に至るまで、日本の中国(史)学は本国を上回る研究蓄積があると言っても過言ではないでしょう。しかし、そうした研究蓄積と表裏一体で、「中国経済史」のジャンルでは著作・研究が高度に専門分化しており、素人が全体像(通史)を理解するのはやや難しいと感じていました。本書は、そんな初学者(“マニア”な素人)に、分かり易い近代(実質的に1920年頃までの)中国経済の通史ビューを与えてくれるという意味で、かなり画期的でしょう。

本文内容は、1ステージ、2アクター、3パフォーマンス、4モダニゼーションと洒落た(笑)4章建てになっています。
1章では通史定番の自然地理的条件、人口動態・集住形態の動態が明らかにされ、本書のキー概念:近代中国経済のあり方を規定した重要な条件(権力の行き届きにくい中小聚落構成比の高さ、即ち「官」「民」or「士」「庶」の乖離)が提示されます。
2章では、財政・官僚(科挙)制についての解説と、中間団体(多くは非役人の科挙合格者−郷紳が仕切るが、非「士」が仕切っていた場合は反権力的な秘密結社になる)による分散的な聚落自治構造が指摘されます。
3章では、南北の統一とモンゴルとの戦争を遂行した明朝(前期)の「現物主義」下での経済構造変化、明清交代を挟んだ商業化・(貿易・地域間決済通貨としての)銀経済の発展・貧富分化、現物主義の残存−財政原額主義(結果としてのチープガバメント実現・中間団体の重要性)等について解説されます。
4章は、アヘン戦争の頃から国民政府設立までの所謂近現代経済史の概説で、ここでも「中間団体」の存在感、裏を返せば「中央政府」の存在の希薄感をキー概念に論が進められています。以下のような指摘・考察には刮目すべき所大かと思います。
 ○ 中央集権的経済システム(法制)の不在で、租界・海関を中心とした外国法・人が仕切る“不平等条約”システムが必要とされた面があった
 ○

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