芸能人はなぜ干されるのか? の感想

毎日テレビで歌手やタレントをを観ない日はないです。
小学生高学年のうちの娘もそろそろ憧れを持つようになって来た華やかな芸能界。
でも、憧れの彼らの住んでいる芸能界という世界は、一般人の常識が通用しない、恐ろしい、アンタッチャブルな世界だったようです。
冷静な常識人の（こちら側の世界の感覚の）星野陽平氏が緻密に調べ上げた圧巻の2段組み約300ページ。
読みました。

読んで一番感じたことは、芸能人は商品ですか？物ですか？ということでした。
商品とは、CDやDVDや番組や作品だと思うのです。
芸能人と事務所とメディア関係者が、商品・作品を一緒に作り上げて視聴者を喜ばせ、売り上げを獲得するという健全な感覚に、早く移行して欲しいと思います。
まるで物のように人を扱うことが、芸能界の暗黒を生んでいると感じました。

このままではいけないと強く思います。
行政にも早く手を入れて欲しいです。
まずは、早急に芸能人の労働組合を作る必要があると思いました。

元々「芸能」とは、民衆の中で差別された被差別民が担うものであったこと、
日本各地の寺社等で行われていたその興業が、各地の渡世人・やくざのシノギであったこと、
これらは民俗学などの書物で知ってはいたが、そのシステム自体が姿を変えて、現在でも健在だとは知らなかった。

具体的には、芸能人は２１世紀の現在でも、一般的に人とは扱われず、その稼ぎを不当にピンハネされ、
利用されているのだと、この本では様々な資料から証明する。それは誰にかというと、所属するプロダクションにだ。

最近のドラマやテレビ番組がどれも似たり寄ったりで面白みがなくなった理由、
アニメや洋画に素人の芸能人が出てきて下手くそな吹き替えをして興ざめな理由、
いったい誰が見るのかわからないようなクズ邦画が作られては捨てられている理由、
全ての原因は、この本に書かれているような大手プロダクションの芸能人・マスコミ支配による歪みなのではないか。

現在の日本はどんどん余裕がなくなってきている。
不自然な制度がいつまでも残れるほど、社会にも民衆にも余裕はない。
果たしてカタストロフはいつやってくるのか。それを楽しみに待ちたい。
また全ての芸能プロダクション・権力構造に戦いを挑んだこの本が、果たして「増刷を許されるのか」も気になるところだ。

大手芸能事務所に干された芸能人の歴史を網羅しています。日本の裏芸能史とも言える内容です。また後半にアメリカ・ハリウッドの芸能産業に関する法律や労働組合が紹介されており、日本の芸能界の異常性が際立ちます。正直、個人的に日本の芸能界にはもはや興味がありませんが、この本はよくあるネガティブなスキャンダル本ではなく、海外の芸能産業と比較する事で、日本の芸能産業を復活させるためのポジティブな道も提示している所がミソかと思います。第七章では日本の芸能界最大のタブーとなっている「バーニングプロダクションと暴力」について記されています。おそらく出版社が鹿砦社でなければこの本は出版できなかったでしょう。私見ですが、かつて日本のエンターテイメント産業は黒澤明、溝口健二、小津安二郎の映画のように、それこそハリウッドやヨーロッパの映画人達の手本にされる程、質が高く、国際的に認められておりましたが、今では見向きもされず、TVドラマにしても日本より韓国ドラマの方が世界的にポピュラーなコンテンツになってしまいました。こうした日本のエンターテイメント産業衰退の原因は、日本の芸能界の構造、体質、商慣習にあるのではないかと、この本を読んで改めて思いました。バーニングは日本の新聞テレビを支配しているため、こうした問題を追及している国内メディアは、この本と同じ出版社が刊行している月刊誌『紙の爆弾』の他、『サイゾー』、朝堂院大覚氏のYouTube放送局『JRPtelevision』、政治結社『大日本新政會』のホームページ、時々『週刊文春』くらいです。この本のテーマは芸能人に焦点を当てており、それについては十分な内容でしたが、個人的に物足りなかった点は、日本の大手芸能事務所は元・警視総監を顧問に迎えるなどして警察、政財界、裏社会の癒着のハブとなっている事は、芸能産業内の問題にとどまらず、日本社会の根幹に関わる問題なので、そうしたテーマでも是非、鹿砦社や著者の方々には取り組んで頂けたら興味深いです。0