Capital in the Twenty-First Century の感想

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タイトルCapital in the Twenty-First Century
発売日2014-03-10
製作者Thomas Piketty
販売元Harvard University Press
JANコード登録されていません
カテゴリ洋書 » Subjects » Nonfiction » Economics

購入者の感想

クズネッツの誤解、tricle-downに一般性はないことは事実。資産が大量に破壊された後は、catch-upの段階でtricle-downは起こりうる。しかし、大戦争による大規模破壊を所得分配の手段にすることは大いなる矛盾。民主主義下では、再分配を必要とする階層は政治参加に無関心。国全体がプラトン的理想主義者になり、実行意欲と権限と実行力を持った哲人政治家が独裁的に政治を行わない限り、所得の細分は不可能であろう。

ハードカバーで、500ページを超える大著で、ハードカバーだと重い(実際にscaleではかったら、1、2kg)。カバンに入れて持ち歩くには重いし、通勤の電車で読もうと思っても、立って読むと、腕が疲れる。。。。苦行である。

年内には山形浩生の訳で日本語版が出るそうだが、他レビューにあるように、英語は平坦ですらすら読めるので、翻訳本を半年近く待つのなら、英語版で読んでも良いかもしれない。

著者のピケティは、アメリカで経済学を学んだようだが、アメリカと相性が良くなく、本国フランスに帰って、歴史と統計からみた経済の不平等という研究分野を確立したようである。

本書を思い切り要約すると、自由経済や資本主義は貧富を拡大させる。理由は色々とあるが、金持ちが優位なシステムになっている。
貧富の格差を縮めるのは戦争で、「丸山真男をひっぱたきたい」を書いた当時31歳のフリーターの直観は正しかった訳だ。

アメリカでベストセラーになった要因は、経済格差があまりにも大きくなったことに対する、疑問がある程度、一般化したからだ。日本でも経済格差の問題が取り出さされるが、肌感としては一般的でない。日本において経済格差が本当にリアルに感じられるのは10年後位だろうか。

本書は、データがやたら多く、当たり前のデータを数ページにわたり説明されるのもどうかと思うので、要約本を読むのも一つの考え方だが、面白いデータもあるし、これだけのデータボリュームが本書の価値でもある。疲れたら、適当に読み飛ばしながらページを進めるのが現実的な読み方だと思う。

 Karl MarxのDas Kapital=Capital=資本論を意識したに違いない表題の本書は、歴史的なデータを過去に無い規模(だと筆者)で駆使し、577頁にわたって過去現在の経済を深耕し21世紀を予測する。一番の論旨は、資産は(20世紀を特殊な例外として)本来自己増殖し、格差が無限に拡大し、21世紀には民主主義社会と社会正義に鋭く対立して社会の不安定要素になるから、政策的対策が必要だという。筆者が推奨する対策は国際累進資産税である。

 「19世紀の資本論」は、少数が資本の独占益を得て資本と格差は無限に拡大し、資本同志が闘い、労働者が革命を起こし、資本主義は自壊するとした。産業資本が労働者を搾取する構図だ。「21世紀の資本論」はそれと相似形で、それを資産一般の自己増殖に止揚したと私は読んだ。但し原因も対策も異なる。本書最後の数行は「経済データをよく見よ」と論じ、貧者への想いを覗かせる。Refusing to deal with numbers rarely serves the interests of the least well-off.

 上記だけだったら1桁少ない頁数で足る。本書はあらゆる経済事象にデータに基づく明解な解説を試みる。一部を列挙すれば、Marxの資本主義自滅説はどこで間違っていたのか、元植民地はなぜ経済成長が遅れがちなのか、英仏が昔巨大に膨れ上がった債務を減らした方法、米奴隷制の経済学的位置付け、北欧で平等社会構築の契機、米英で企業幹部が高給を取る理由、金持ほど資産運用利率が高い理由、中東や中国は世界の資産を買い占めるか、親子間の教育レベル・収入レベルの相関が高まっている理由、ギリシャ・キプロス危機の経緯と教訓、Euroの経緯と今後、など。

 本書が分厚いもう一つの理由は、良く言えば判り易い記述のため、悪く言えば冗長のためだ。式を導入したら、式の説明、意味の説明、数値を入れて例証、と3段構えだ。提案の累進資産税は本書の4ヶ所に少しずつ異なる税率で説明されている。

 本書は分厚くて荷が重いが、内容は刺激的で啓発的だ。歴史を踏まえて21世紀の経済を理解・予測する上で貴重な著作だ。

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