クジラとアメリカ: アメリカ捕鯨全史 の感想

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参照データ

タイトルクジラとアメリカ: アメリカ捕鯨全史
発売日販売日未定
製作者エリック・ジェイ ドリン
販売元原書房
JANコード9784562050963
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 海洋学 » 水産学

購入者の感想

「群盲、ゾウをなでる」という言葉があるが、相手ははるかにデカイくじらである。そのデカイくじらについて、そして英米を中心とした西欧諸国家とクジラと捕鯨との関係がくわしく記されていく。もちろん、なによりも詳述されているのは、英植民地であったアメリカの入植以前から始まる歴史である。読み進めるうち、クジラもアメリカも知らない「盲人」のような読者も徐々に啓発を受け、その全体像がほの見えてくるにちがいない。

巻頭エピグラフとして2題、取り上げられている。当初読んで、ボンヤリとした印象であったのだが、読了して、あらためて読むと、当該書籍をたいへんうまく要約していると感じられる。

その一つは「アメリカ人がどれだけ多くのものを、クジラ捕りに負っているのかを正しく認識する者は少ない。/我らの歴史において、クジラ捕りは突出した役割を果たし、/足取りもおぼつかなかった合州の国に富と繁栄をもたらした。/クジラ捕りの無骨で不屈なる精神は、世界中の文明開化や探索、通商に影響をおよぼしたのである」というものだ。

たしかに「足取りもおぼつかなかった合州の国」アメリカが、クジラを捕獲し、その皮脂から灯油を生産し、ソレが犯罪率の高かった宗主国イングランド(とりわけロンドン)の暗い町並みを明るく照らし、その販売によって国力を増していく様が描かれ・・、捕鯨船は、クジラを追って沿海、近海、遠洋、果てはホーン岬を回って太平洋へ、ハワイへ、日本へ、ベーリング海へと船足を伸ばしていく。その過程また結果として「世界中の文明開化や探索、通商に影響」がおよぶ様が描かれ・・、アメリカ人だけでなく、世界中のだれもが、それなりに「クジラ(捕り)」に負い目を感じる必要を銘記させられる。

もうひとつの巻頭エピグラフは、「そして神は、海の大いなる神獣(クジラ)を創造された」という聖書の創世記1:21の言葉である。この言葉は意味深長である。人間の繁栄の陰で、膨大な数のクジラたちが犠牲とされてきた。石油精製された灯油が開発されて捕鯨が廃れるまでが、当該書籍の記述範囲であるが、クジラへの負い目、哀悼の念と共に自然の造物主(神)への負い目をも同時に銘記させられる。

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