工学部ヒラノ教授 (新潮文庫) の感想
参照データ
タイトル | 工学部ヒラノ教授 (新潮文庫) |
発売日 | 2013-06-26 |
製作者 | 今野 浩 |
販売元 | 新潮社 |
JANコード | 9784101251615 |
カテゴリ | ジャンル別 » 人文・思想 » 教育学 » 一般 |
購入者の感想
これは面白い。ユーモアを交えながらも、応用物理を専攻したある意味では数学の天才でもある著者がなぜ金融工学という俗にまみれた異端の領域に足を踏み入れることになったかの背景が伺われる作品でもあります。それは日本の一流大学と工学部という独特の社会の競争原理が生み出した副産物だったのです。ある程度の国際的に名の通った専門雑誌に論文を載せないと生きていけないこの狭い社会のルールの下で、自分の専門領域での行き詰まりに直面した数学ができる元天才にとっては,数学を没文化的に道具として使える金融工学ほど転身しやすい領域はなかったというわけです。
これは金銭という欲への執着の欠如という意味では特異な日本的な現象です。ここにはアメリカに見られるような大きな毒はありません。せいぜい見受けられるのは、狭い社会での見栄とプライドだけなのです。
でもこれほど優秀な人たちにこれほどの雑務を強いる日本の一流大学っていったいどうなっているんでしょう。これじゃあまりもの無駄遣いです。一流の大学教員って本当に大変なんですね。よほどの万能の頭脳と体力がなければこれほどの多様な職務をこなしていけませんわ。逆説的な意味で、さすがに日本を代表する知性の持ち主たちだからできる職業なのです。著者がいう一流の才能を持つ若者との接触の喜びだけが彼らを支えているのかもしれません。
これは金銭という欲への執着の欠如という意味では特異な日本的な現象です。ここにはアメリカに見られるような大きな毒はありません。せいぜい見受けられるのは、狭い社会での見栄とプライドだけなのです。
でもこれほど優秀な人たちにこれほどの雑務を強いる日本の一流大学っていったいどうなっているんでしょう。これじゃあまりもの無駄遣いです。一流の大学教員って本当に大変なんですね。よほどの万能の頭脳と体力がなければこれほどの多様な職務をこなしていけませんわ。逆説的な意味で、さすがに日本を代表する知性の持ち主たちだからできる職業なのです。著者がいう一流の才能を持つ若者との接触の喜びだけが彼らを支えているのかもしれません。