雍正帝―中国の独裁君主 (中公文庫) の感想
参照データ
タイトル | 雍正帝―中国の独裁君主 (中公文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 宮崎 市定 |
販売元 | 中央公論社 |
JANコード | 9784122026025 |
カテゴリ | » 本 » ジャンル別 » ノンフィクション |
購入者の感想
歴史書であり、同時によろず指南の書。話題は広がり、跳んで跳んでと追いつくのが大変だが、尋常ではない語り手らしく、きちんと前後が繋がって深い。今回も、大変に勉強させて頂きました。有難うございます。
本編ももちろん抜群に面白いのだが、それに加えて、巻末に収録されている「雍正帝朱批諭旨解題」と礪波護氏の「解説」によって本書の成立事情が明らかにされる。その辺りもまた、面白かった。
宮崎市定氏といえば、いわずと知れた中国史の大家であるが、留学先として指定されたのはフランスであった。その後、中国にも行けるはずだったのだが、満州事変の勃発により(!)お流れになってしまった。
帰国した宮崎氏は政府から清朝の中国統治策についての研究を命ぜられる。米国は日本統治のために日本文化を理解する必要を感じ、ルース・ベネディクトに研究を命じ『菊と刀』を執筆させたが、日本政府には、そういう発想はないと思っていた。ところが、満州事変当時にそのような研究を命じていたということに驚きを覚えた。
氏がまず史料として用いたのは編年体の歴史書である『東華録』であった。ところがこれを読んでいると雍正帝の時代だけ叙述が生き生きとしている。そのため、何かタネ本があるのではと考え、史料を渉猟するうちに京大文学部の書庫に眠っていた『雍正帝朱批諭旨』と出会う。
これは雍正帝と官僚との往復信書であり、この中で雍正帝は皇帝自ら官僚を叱咤し、罵倒し、誉めそやし、時には自らの過ちを認めたりしている。極めて生臭い史料である。
しかし、『雍正帝』はこの史料のみによって成ったものではない。本書の中でも極めて印象深い「キリストの誓い」の章はキリスト教宣教師の書簡集に拠ったという。これは氏が留学先のフランスで購入したものだという。
歴史家と史料との出会いは、まさに一期一会。そんなことを感じさせられた。
宮崎市定氏といえば、いわずと知れた中国史の大家であるが、留学先として指定されたのはフランスであった。その後、中国にも行けるはずだったのだが、満州事変の勃発により(!)お流れになってしまった。
帰国した宮崎氏は政府から清朝の中国統治策についての研究を命ぜられる。米国は日本統治のために日本文化を理解する必要を感じ、ルース・ベネディクトに研究を命じ『菊と刀』を執筆させたが、日本政府には、そういう発想はないと思っていた。ところが、満州事変当時にそのような研究を命じていたということに驚きを覚えた。
氏がまず史料として用いたのは編年体の歴史書である『東華録』であった。ところがこれを読んでいると雍正帝の時代だけ叙述が生き生きとしている。そのため、何かタネ本があるのではと考え、史料を渉猟するうちに京大文学部の書庫に眠っていた『雍正帝朱批諭旨』と出会う。
これは雍正帝と官僚との往復信書であり、この中で雍正帝は皇帝自ら官僚を叱咤し、罵倒し、誉めそやし、時には自らの過ちを認めたりしている。極めて生臭い史料である。
しかし、『雍正帝』はこの史料のみによって成ったものではない。本書の中でも極めて印象深い「キリストの誓い」の章はキリスト教宣教師の書簡集に拠ったという。これは氏が留学先のフランスで購入したものだという。
歴史家と史料との出会いは、まさに一期一会。そんなことを感じさせられた。