凍 (新潮文庫) の感想

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タイトル凍 (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者沢木 耕太郎
販売元新潮社
JANコード9784101235172
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

読み終わって一週間以上経つのに、まだ頭から離れないほど感銘を受けた一冊。

世界有数の天才クライマー、山野井泰史さん。
その泰史さんが、「妙子は天才だよ」と賞賛する9歳年上の奥さまもまた、世界的なクライマーという、そんな山野井夫妻の、ヒマラヤ山脈にある未踏の北東壁、ギャチュンカン(7952m)に、アルパインスタイルで挑む様子を描いたノンフィクション。

雪山を題材にした本は、20年以上前に、夢枕獏さんの『神々の山嶺』を夢中で読んだことがあって、これを超えるものはないだろうと思っていたのだけれど、沢木耕太郎さんはやっぱり凄い。

山野井泰史さんのお顔を知らなければ、沢木耕太郎さんのお姿を想像して読んだだろうな、と思えるほどに、緊迫した息遣いをも感じる臨場感と細かい描写に圧倒。

山野井夫妻のお互いへの絶対的な信頼と尊敬。
11歳の頃から、一日足りとも山のことを思わない日はないという、山への強くて熱い想い。

わたしには抱いたことのない感情ばかりで、羨ましい一方、人間とはこんなにも肉体と精神の限界に自ら向き合えるものなのか、と驚くことしきり!

自らの死、伴侶の死を達観し、どんな状況においても冷静に決断をくだし、凍傷で手足の指のほとんどをなくしても尚、山に焦がれるお二人。
こんな凄い人が存在するなんて。

読了後、この人間離れした感覚の持ち主がどんな方なのか、どんな登り方をされるのかを知りたくて、NHKの『白夜の大岸壁』を視聴。
ギャチュンカンから5年後に、大岸壁オルカに挑まれた山野井夫妻は、とても幸せそうで、あんなにもキラキラした瞳を持つ男性と幸せそうな笑みを浮かべる女性を見たことがない!というくらい輝いてらして。

わたしは一生、肉眼で見ることは叶わないだろうけれど、生身で頂に立ち、見渡した景色は、きっと到底信じられない美しさ。

「妙子!妙子!」
と、愛おしくてたまらないといった声で妙子さんを呼ぶ泰史さんと、それにクールに応える妙子さんがまた素敵で、この夫妻に関する書物をもっと読みたい♡

彼らは最初から、ふつうの人たちとは違っているのだと思う。
山に登る話は、よく美しい表現がされていて、
読む側が勘違いしてしまうが、
ここには、喜びや苦痛を含めた、リアルな人間像が描かれており、
自分とは違うけれど、魅力的な生き方をしている人の姿を
感じ取ることができる。
生きることと死ぬことが、常に隣り合わせの登山家にとっては、
どっちを取るかは、驚くほど簡単な回路で選択できてしまう
自分が生きのびるという観点から判断するという
シンプルで恐ろしい解決のしかたなのだけれど、
これは、自分たちが日々の暮らしの中でこだわっている小さな問題を
簡単に吹き飛ばしてしまうほど、迫力がある。
身体的なダメージを受けても、人が望むことが
これほどの迫力を持つ物なのかと驚いて読んだ。
真実だから、すばらしいのかもしれない。

 本書は『新潮』2005年8月号に一挙掲載された「百の谷、雪の嶺」を改題・出版したもので、登山家・山野井泰史・妙子夫妻が中国・ネパール国境の山・ギャチュンカン(7952メートル)に北壁から挑戦した際の壮絶な登攀を描いています。約8000メートルの山に登ること自体が非常に厳しい闘いです。妙子氏は7500メートルから上を目指そうとした段階で体調不良のため登頂を断念、泰史氏が単独登頂を果たします。しかし、雪氷と雪崩、悪天候、凍傷に見舞われ、ベースキャンプ(約5500メートル)までの夫妻のそれぞれの下山行はまさに「闘い」です。下山後、泰史氏は凍傷にかかった右足の指5本と左右の手の薬指と小指を付け根から失いました。妙子氏は両手の指を付け根から失いました(ただし、両手の第二間接から上の指はギャチュカン以前の凍傷で既に切断)。

 レビュアーは登山には素人なので、山野井夫妻の登攀スキルの高さを、実感を持って理解できるわけではありません。しかし、描写されるような困難な状況で、冷静な判断をほとんど失わずに壁面を降下するのに必要な作業を淡々と実行できる山野井夫妻の凄さが伝わってきます。それほど高い登攀スキルを有している泰史氏でも下山中、疲労のために幻覚を見、焦りから壁面降下の手順を省略し、ロープに足を挟まれて身動きが取れなくなるというミスを犯してしまいます。これが一層、胸に迫ります。具体的に「何」が衝撃的かを特定することは困難ですが、読後の衝撃が体から抜けません。0

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