国家緊急権 (NHKブックス No.1214) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル国家緊急権 (NHKブックス No.1214)
発売日販売日未定
製作者橋爪 大三郎
販売元NHK出版
JANコード9784140912140
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

 このタイトルで、帯に「憲法より大事なものがある」と書かれているから、自民党の憲法改正草案の第98条のごとく、右寄りの書物かと思いましたが、そうではありませんでした。
 
 橋爪氏曰く、国家が、戦争や自然災害など突発的な出来事に遭遇した場合、自国民を守るために、国家緊急権を行使する必要がある。その場合、確実に対応できるのは政府機関を発端とした軍隊(自衛隊)だけであり、時として超憲法的にならざるを得ない。民主主義において法に基づかない暴力行為はあってはならないが、冷戦後の予測できないテロが頻発する現代では、十分に起こり得るものであるため、現行の憲法秩序を踏まえたうえで、国民が「国家緊急権」の概念を持っておくことは必要であると。
 しかし、だからといって、国家緊急権の規定を設けることは、国家緊急権を行使する政治家に免責の道を与えることにつながるからすべきではないという。そして、超憲法的な出来事を憲法が予想し、ある意味承認したことになり、それは、まるで高校が喫煙した時の罰金を予め定めておくのと同じく大滑稽なことであると。
 国家緊急権を行使した政治家は喜んで職を辞職し、喜んで刑事訴追を受け、喜んで有罪になる。命令を受けた政府職員はすべての事実えお包み隠さず明らかにして、彼らに責任を負わせる必要はないと。

 橋爪氏の作品は「ふしぎなキリスト教」以来、やや大げさに宣伝されているようで、「全国民必読の書」などと書かれているが、本書の半分は資料編として添えられており、テーマが目新しいだけで、決して内容が充実しているわけではありません。だから、高校生でもすぐに読めてしまうくらいアイデアは明確な書物ですが、上級問題とまでは言えず、買ってまで読むべきではないと感じました。だから、今回は星三つにしました。

国家に緊急事態が生じた時にそれに対処するために、政府が一時的に憲法や法律を無視してでも迅速な行動がとれるようにするために必要とされる、国家緊急権について分かりやすく論じた良書。一般には馴染みのない国家緊急権について「憲法とは何か?」といった基礎から説明しながら、その必要性と問題点についてまで見事に議論が展開されている。第六章のアベノミクス批判はちょっと余計だと思うが、それ以外は高度な内容が読みやすく書かれていて、誰にでもお勧めできる。橋爪大三郎の著作としてもトップクラスの出来であり、著者の意見への賛否に関わらず国家緊急権についての一般向けの書として貴重な一冊です。

先年の東日本大震災によって原発事故が起こったのだが、その際は皆が放射線の恐怖におののいた。そうした突発的な大事故や大災害の際には人々の安全を守るために政府が緊急避難などを発令することになる。しかし、そうした緊急事態の時に政府がどうすればよいかは法律に書かれている訳ではないし、すでにある法律で対処できる事態でない可能性も高い。それどころか憲法が緊急事態への適切な対処に対する障害になることもありうる。だから緊急事態においては一時的に政府は人々の安全のために憲法を無視した行動をとる必要も出てくる。そうした緊急事態で政府が人々のために自由に行動できるようにするために考えられたのが国家緊急権である。

この著作は国家緊急権について「憲法とは何か?」や「軍とは何か?」といった基本に遡って分かりやすく説明し、それが国民の安全のために必要なことや悪用されると独裁に陥る危険性があるなどの国家緊急権に関する必要な議論を一通り見事に論じている。読者の側にあまり知識がなくても理解できるようにうまく書かれているので、高度な問題を論じている割にはとても読みやすい。巻末には国家緊急権に関連した資料集も付いており至れり尽くせりだ。私の印象では橋爪大三郎による著作としても軽く五指に入るほどの傑作(到達点?)であり、ともかくお勧めしたい。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

国家緊急権 (NHKブックス No.1214)

アマゾンで購入する
NHK出版から発売された橋爪 大三郎の国家緊急権 (NHKブックス No.1214)(JAN:9784140912140)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.