哲学コレクション〈4〉非神秘主義―禅とエックハルト (岩波現代文庫) の感想

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参照データ

タイトル哲学コレクション〈4〉非神秘主義―禅とエックハルト (岩波現代文庫)
発売日販売日未定
製作者上田 閑照
販売元岩波書店
JANコード9784006001827
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » 哲学

購入者の感想

真の自己に於いて真の生を全うする。これは人は何故に如何にして生きるといった問いに対する一つの回答となるでしょう。本書中の言葉を引けばそれ自身で「滾々と」湧き出ずる生を真の自己が汲み尽くすとも言い得、其処では自己も何故にという問いも解消されて、生きることのみしか残されていないのかもしれません。 そして、宗教は其処に至る道程を照らし導いてくれるものと言えるでしょう。
あとがきでの次の言葉が本書の意義を端的に語っています。「東西の伝統の狭間を通底して響きあう両者(禅とドミニコ会士マイスター・エックハルト)の根源的経験に、神秘主義的合一をつきつめて脱却した非神秘主義の自由な平常心が開かれている」。非神秘主義は神秘主義の否定ではなく、神秘主義を突破した先に拓かれる様態であると筆者は述べ、其処へ至る動態を示し導いているのが禅とエックハルトだとします。その動態は「一心に」から「無心に」への飛躍的な質の転換による真現実性の現成、とこれもあとがきにおいて述べられています。エックハルトに於いては自己のみならず神をも放下して無へと突破したところ、禅に於いては自己と対象を止揚して関係性のみとなったところ、其処に現われるのが真の自己と呼ばれるのかもしれません。既知の自己が霧消した後で全ての関係性が包摂されるところとも言い得るでしょうか。恐れに打ち勝って既知の自己の轡を外すことができれば、其処にはこれまでに経験されたことない新たな地平が拓けるのでしょう。それが許されるのは智者、賢者に限られるのかもしれませんが。
本書の視点は非常に興味深いものですが、禅とエックハルトの教義各々の記述に多くを費やしているため、両者の関係に関する論述が些か不足しています。しかし、それは読者の思考によって補足が可能なものですので、本書の意義を減じせしめるものではありません。

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