福島第一原発事故 7つの謎 (講談社現代新書) の感想

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参照データ

タイトル福島第一原発事故 7つの謎 (講談社現代新書)
発売日販売日未定
製作者NHKスペシャル『メルトダウン』取材班
販売元講談社
JANコード9784062882958
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » エネルギー » 核・原発問題

購入者の感想

報道機関として、豊富な取材力や、時にはイタリアの研究機関にも依頼して仮説を追試験しながら検証していった、素直な報告書として納得できる内容である。
吉田所長も、1号機のベントができたのかどうか分からないと言い残したことを時間をかけて検証していったこと、2号機で放射能の大量放出が起こったのはなぜか、など、政府事故調や国会事故調などが、時間切れで追求できなかったことを着実に跡付けている。
そして、最後に武藤副社長のインタビューを通じて、当事者側の技術リーダーの思いも取材しているのは、多面的な視点として意義がある。
もちろん、武藤氏は当事者として多くは語らないが、評者が感じるのは、自衛隊・警察・消防隊などはしょせん外部者の手伝いであって、現場へ入るのも道案内を要請するというお客様だから、テロ対策に立ち向かうなどと言っても実態は役に立たないであろうということだ。ヘリコプターからの給水などは、(米国政府の圧力をかわすための)政治的パフォーマンスであって、技術的にはニ階から目薬であったことが、当事者の口からも聞けて、推測が裏付けられた気がした。
再稼働に向けて、事故時のネックであった水位計などの計測システムや、バルブのアクチュエータなどの細かい駆動システムなどがキチンと総合的に改造されたのかが分からない(規制委員会の審査がそういう福島事故の反省に直結したところで明示されていない)。
ベントフィルターが、高温ガスや高温水の条件ではフィルター効果がないことも。
そういうごく基本的な問題を人手をかけて明らかにしようとしている姿勢をジャーナリズムとして高く評価する。

 福島第一原発事故については、発生後一定期間の主要な報道は目にしており、また事故について書かれた本もいくつか読んである程度のことは知っているつもりになっていた。しかし、当初事実と思っていたことのいくつかが、一定の時間を経て出てきた証言や事実によって実は思いこんでいただけだったということも多くある、ということを本書を読んで思い知らされた。例を挙げると、水素爆発による白煙の映像を何度も目にしていたことから、1号機や3号機のメルトダウンが最も大変な事態だったと思っていたが、実は最も深刻で最大の危機を迎えていたのは2号機だったということ(第4章)、同じく何度も映像で見たことからヘリコプターや消防車からの注水がメルトダウンの進行を防ぐのに少しは効果があったと思っていたが、現場の電源復帰作業を妨げただけで何の効果もなかったこと(第5章)などである。これらを含め、本書は多数の関係者のインタビューや専門家による検証データの分析、更には自ら国内外の機関へ実験を依頼して検証するなどして、事故の謎として設定した7つの事柄についてその解明を試みている。一報道機関がここまでするか、と思うような執念を感じる部分もあり、かなりの労作である。

 もう一つ本書を読んで思ったのは、ある事故から最大限の教訓を引き出す上で、謎や疑問とされることを一つ一つ検証し解明していくことの重要さである。事故後ある程度時間が経って原子炉建屋の内部の状況が明らかになったり、当事者の新たな証言が得られたりということで初めて解ける謎もある。メルトダウンした原子炉の場合、将来においても事故現場の本当の状況は確認できないかもしれない。それでも、出来る限りの情報を集め検証し、謎や疑問を解明していくことが重要だろう。それが、今回の未曽有の事故で被害を受けた福島の人たちの継続的な労苦、極限状況で事故対応に当たり(既に十分すぎるほど大きな被害をもたらしてはいるが)最悪のシナリオを防いだ吉田所長を始め原発所員たちの奮闘に報いることにつながるであろう。また、原発は勿論、他のいろいろな大規模施設における事故の防止、また二度とあってはならないが、将来同様の状況になった際の対応に関してハード、ソフト面で多くの知見、対策方法を得ることもできるであろうから。

NHKテレビの「メルトダウン」取材班の著作です。
原発事故の視点は様々ありますが、技術的な点から最もわかりやすく、興味深いのが、このNHKスペシャルの5本のテレビ番組だと思います。
書店で見かけるや否や、躊躇なく購入しました。

既に3本までを「メルトダウン 連鎖の真相」として書籍化していますが、本書は、その後の2本の番組、最近までの新事実を加え、新たなノンフィクションとして書き下ろしたものです。

新書版らしく、視点を絞り、無駄なく、全体像が簡潔にまとめられています。
そして、最終章で、武藤栄 元副社長への独自取材を通じて、政府・通産省・東電本社等の事故対応に対する取材班の思いが語られています。

NHKスペシャルを見ていたので、より興味深く読めました。
図表、写真等が的確でわかりやすく、労作です。
6人の分担執筆ですが、全体の流れに違和感がなく、よく練られた本だと思います。
(280)

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