罪と罰 上 (岩波文庫) の感想

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参照データ

タイトル罪と罰 上 (岩波文庫)
発売日2014-12-18
製作者ドストエフスキー
販売元岩波書店
JANコード登録されていません
カテゴリ文学・評論 » 評論・文学研究 » 外国文学研究 » ロシア・東欧文学

購入者の感想

初めて読んだのが35年前、高校生の時でした。あまりの衝撃に読むのを止められず、睡眠時間を削って2日で一気に読みました。その後、ドストエフスキーの作品は全部読みました。その中でも「罪と罰」は「地下生活者の手記」と並んで大好きな作品です。今でもよく読み直します。

僕がドストエフスキーから学んだのは、思想・哲学とは「解析」するものではなく「体験」するものである、ということです。多くの場合、思想家・哲学者は思想を体系的に理論化・構造化して説明しようとしますが、ドストエフスキーは思想・哲学とは客観的・第三者的に外から「説明」するものではなく、自らがその中にどっぷりつかって「体験」するものであること教えてくれました。主人公の意識の流れに身を任せて、一緒になって流れを体験することの重要性です。そうでないと本当の意味での本質には近づけない。

ラスコーリニコフが「理屈で正当化して」金貸しの老婆を殺害するときの意識の流れと、その直後にたまたま居合わせてしまった老婆の妹を「理屈でなく」殺害する時の意識の流れのコントラストは凄い。結局、理屈で考えて行動しても、偶然(居合わせた妹)に翻弄されて理屈も崩壊してしまうという現実の迫力。犯行後、橋の上からコインを川に投げ捨てて、自らを「すべてのもの」(自分を愛してくれている母親や妹)から切り離す時のラスコーリニコフの意識。でも結局は愛する者と自分を切り離すことはできないという現実。ラスコーリニコフがソーニャに殺人を告白する時の両者の心理描写の凄さ。家族のために自らの尊厳を捨てて娼婦に身を堕としたソーニャが唯一の拠り所としている信仰を「理屈」で踏みにじるラスコーリニコフ。ところがソーニャは「理屈」ではなく「心理」で反応する。ソーニャは「理屈」で信仰を踏みにじられても傷つかない。ラスコーリニコフの空しい「理屈」には惑わされない。むしろいかにラスコーリニコフが苦しんでいるかを「心理」で感じて救おうとする。

当時、数学と物理学が大好きで「論理」の信奉者だった青臭い高校生だった僕には頭をハンマーで殴られたような衝撃でした。論理というレンズだけで見ることがいかに視野狭窄症であるかを思い知らされた本です。その後の僕の人生観を変えた一冊です。

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