「東京電力」研究 排除の系譜 の感想
参照データ
タイトル | 「東京電力」研究 排除の系譜 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 斎藤 貴男 |
販売元 | 講談社 |
JANコード | 9784062174176 |
カテゴリ | » 本 » ジャンル別 » ノンフィクション |
購入者の感想
東京電力がどういった会社なのか。現時点で、ネガティブな印象がある企業の、その源泉がどこにあるのか。それを中立的な視点で追い求めた力作。
今にはじまった話ではなく、そもそも9電力体制のスタートが、国鉄の分割民営化のモデルだったくらいだから、本来であれば腐敗から遠い組織だったはず。けれども、レッドパージや労組つぶしに代表される、既得権益を保持していこうという産業界の経営層、保守政治家の意向が、公益事業の巨大な組織を腐敗させていく。原発そのものも、最初からゆがんだ形ではじまっている。
腐敗した組織は、原発の安全性を経済性に優先させることはできず、運転にあたっては8次孫請けまでいるような、ヤクザがからむような労働現場を提供し、再処理工場は誰も止めることができなくなっていく。
こういった話題に加え、本書の魅力は、神格化されてきた、東京電力の中興の祖である木川田一隆と経団連会長までのぼりつめた平岩外四の影の部分も明らかにしている点にある。木川田は強いリーダーシップで経営を引っ張っていったが、同時に労組つぶしの先頭に立っていた。そのことが、後に自浄能力のない組織につながっていく。
「排除の系譜」というサブタイトルの意味も重い。その論理が、外側が見えない組織、お客のことがわからない組織として肥大化させてしまった原因かもしれない、とも思う。
途中、発電所爆破計画など、寄り道が多く、読者にとってちょっとしんどいかもしれない。けれども、その寄り道を通じて、東京電力の腐敗は、実は日本社会の、あるいは政府や他の日本企業にも共通することなのではないか、ということにも気づく。幸い、他の業種は原発を持っていない。それでも、水俣病などを引き起こしてきた過去があるわけだが。
あと、著者の中立公正であろうという姿勢が好ましい。取材に応じてくれた人に対しては、東電社員であっても一定のリスペクトをしている。それはすごく大事なことだとも思う。0
今にはじまった話ではなく、そもそも9電力体制のスタートが、国鉄の分割民営化のモデルだったくらいだから、本来であれば腐敗から遠い組織だったはず。けれども、レッドパージや労組つぶしに代表される、既得権益を保持していこうという産業界の経営層、保守政治家の意向が、公益事業の巨大な組織を腐敗させていく。原発そのものも、最初からゆがんだ形ではじまっている。
腐敗した組織は、原発の安全性を経済性に優先させることはできず、運転にあたっては8次孫請けまでいるような、ヤクザがからむような労働現場を提供し、再処理工場は誰も止めることができなくなっていく。
こういった話題に加え、本書の魅力は、神格化されてきた、東京電力の中興の祖である木川田一隆と経団連会長までのぼりつめた平岩外四の影の部分も明らかにしている点にある。木川田は強いリーダーシップで経営を引っ張っていったが、同時に労組つぶしの先頭に立っていた。そのことが、後に自浄能力のない組織につながっていく。
「排除の系譜」というサブタイトルの意味も重い。その論理が、外側が見えない組織、お客のことがわからない組織として肥大化させてしまった原因かもしれない、とも思う。
途中、発電所爆破計画など、寄り道が多く、読者にとってちょっとしんどいかもしれない。けれども、その寄り道を通じて、東京電力の腐敗は、実は日本社会の、あるいは政府や他の日本企業にも共通することなのではないか、ということにも気づく。幸い、他の業種は原発を持っていない。それでも、水俣病などを引き起こしてきた過去があるわけだが。
あと、著者の中立公正であろうという姿勢が好ましい。取材に応じてくれた人に対しては、東電社員であっても一定のリスペクトをしている。それはすごく大事なことだとも思う。0