つくられた桂離宮神話 (講談社学術文庫) の感想

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参照データ

タイトルつくられた桂離宮神話 (講談社学術文庫)
発売日販売日未定
製作者井上 章一
販売元講談社
JANコード9784061592643
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会一般

購入者の感想

この著者の井上章一さんは、前にラブホテルという性愛空間が戦後日本においていかにして構築されたか、その言説を追った『愛の空間 (角川選書)』という本を読んだことがある。綿密で禁欲的な言説史の研究は、ラブホテルという軽い題材でありながらも、読ませるものであった。
その研究スタイルは本書でも健在。この本は、桂離宮という立派な古典建築を扱いながらも、建築という専門分野にはとどまらない。本書のテーマは桂離宮ではなく、桂離宮という建築の美的評価にまつわる「ディスクール」である。
ディスクール(言説)とは、複数の解釈が重ねられていく内に、それが現実に先行していくという現象を指す。人間誰しもが時に陥る、偏見や作為的なものの見方。それが積もり積もって、一つの確固とした現実として縁取られていく、その過程を本書は描く。

高評価に含まれる一種の偏見を解きほぐしているため、一見この本は桂離宮という建築物を愚弄しているようにも受け取られかねない。筆者自身もあとがきでそのことに触れ、真っ先に否定している。
たしかに、言説によってその学術的、美的評価が増殖してはいるのかもしれない。しかしどちらにしろ、戦後から拝観の制限がゆるくなり、一般大衆にとっての京都の一大観光名所として桂離宮が盛況したというのは「事実」であり、さらに簡素な構造をモダニストの建築家にもてはやされる一方で、新御殿やその他の装飾的な部分をポストモダニストやその他の建築家によって評価されたということもまた、覆しがたい「事実」なのである。
同じ建物であるのに、そのように全く両極端の陣営から評価されること。桂離宮には、まるで女性でいうところの「コケットリー」(媚態)のような妖艶でミステリアスな魅力が備わっているようである。
まだ写真でしか見たことないけど。

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