〈運ぶヒト〉の人類学 (岩波新書) の感想

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タイトル〈運ぶヒト〉の人類学 (岩波新書)
発売日販売日未定
製作者川田 順造
販売元岩波書店
JANコード9784004315025
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 文化人類学・民俗学 » 文化人類学一般

購入者の感想

本書のコンセプトは、このページの上の「商品の説明」の弁を借りると、「アフリカで生まれ、二足歩行を始めた人類」の移動について、「この〈運ぶ〉という能力こそが、ヒトをヒトたらしめたのではないか」との観点に立ち、「 アフリカ、ヨーロッパ、東アジアの三つの地点を比較対照し、〈運ぶ〉文化の展開と身体との関係を探る」ものと言えよう。具体的にはフランス、日本(東アジア地域)、アフリカにおける物の運搬方法(道具類の使用)につき、当該民族の体格・骨格や文化・習慣の発達・相違に注目して、その変遷や独自性を多くのフィールドワーク、写真、図表、統計等から検証していくものである。構成・内容は、(1)なぜ「運ぶヒト」か?ーーヒトの進化、直立二足歩行、「運ぶヒト」の定義などの概括ほか、(2)文化の三角測量ーー文化比較の方法論、労働、人間と道具の関係、前屈と身体的相違、「身体技法」の意義など、(3)「身体技法」としての運び方ーー運搬と身体の関係、運ぶ道具、育児方法との関連、アジア・ヨーロッパ・アフリカの“人 種”に観る運搬道具など、(4)「技術文化」と運搬法ーーヒトと道具の3モデル、前頭帯の運搬と棒運搬の特徴、石器文化と東西地域の関係、日本で独特の進歩を観る棒運搬と中国の多様性ほか、(5)「運ぶヒト」のゆくえーー運搬の起源(総括)、その変遷、運搬の「グローバル化」、各地の運搬の総括など、以上の5章からなる。

 アフリカで生まれ、直立二本足歩行を始めた人類は、その空いた手でモノを運び、世界に居所を広げていきました。
 そして、直立することで、大きな脳を支えることができるようになり、それと同時に、声帯が下がり、口腔の構音器官が多様化され、 
 分節された発声が可能になりました。そこで本書の著者、川田さんは、先人にならって、
 人類ををホモ・ポルターンス(Homo Portans)と呼んでいます。
 端的に言うと、本書は人類の<運ぶ>という能力に注目し、ヒトを考えたユニークな視点のものです。
 川田さんは、著名な文化人類学者ですが、今まで色んな問題を考えるのに使ってきた、」文化の三角測量」、すなわち、
 地理的にも文化的にも著しく隔たり、直接の影響関係が全くないか、あるいはほとんどない、旧モシ王国(アフリカ)、フランス、
 そして、日本を比較検討しています。
 そして、アフリカの人は、四肢、とくに前腕と下肢が体躯と比較し長く、骨盤が前傾しているというという特徴から、頭上運搬が多くみられ、  フランスでは、肩から背の上部で支える、重心の高い背負い具、前腕を曲げてさげるアーチ形のは把手のついた籠、
 腰で支え前にまわす物売り籠、による運搬が見られ、日本人(モンゴロイド)は、体躯に比べ相対的に四肢が短いため、前頭帯運搬、
 天秤棒による運搬が特徴的である、という結論を導き出しています。そして、お話は、履物、技術文化、
 エスニックとグローバル化、へと進んでいきます。
 前半に比べ後半は、少し議論が散漫化しているように感じましたが、著者の言うとおり、運ぶという能力に注目し、
 ヒトそして、文化を考えた非常にユニークな考え方の本で、興味深く読ませてもらいました。
 
 

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