南シナ海 中国海洋覇権の野望 の感想

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参照データ

タイトル南シナ海 中国海洋覇権の野望
発売日販売日未定
製作者ロバート.D・カプラン
販売元講談社
JANコード9784062192446
カテゴリ文学・評論 » 評論・文学研究 » 外国文学研究 » 英米文学

購入者の感想

地政学的な内容については他のレビューがあるので別の視点から。
本書が面白いのは戦力均衡論の内容から逆説的に秩序と自由が論じられていることだと思う。特にシンガポールについての章、半独裁制による軍備の増強がそのまま自由の維持に繋がるという構造は面白かった。筆者はマレーシアのマハティールとリー・クァンユー(そして若干劣るながらも蒋介石も)達を良き独裁者として一定の評価を与えている。結局のところこの種類の独裁制は(もちろん圧政的独裁制ではない)一定の自由を代償に為政者に経済発展を委託するという社会契約なのでは?という論も興味深い。ただし、経済発展が進むにつれ西欧諸国的な自由の価値観を人々が求めるようになり、結局のところ独裁制を放棄せざるを得ないという歴史的過程を予測してもいる。

南シナ海については冒頭でかなり身も蓋もない話があり、各国のナショナリズムのぶつかり合いなので思想的に見るものはないこと、武力衝突があっても海上のために人的被害は基本軍人であり西欧メディアの人権意識に訴える部分は少ないだろうということが述べられている。その他台湾の部分では蒋介石に一定の評価を与え、毛沢東への評価は不当であるという批評を行っているが、個人的には西欧(アメリカのリベラル?)で毛沢東の評価がそれなりに高いことに驚いた。また、実質的にアメリカの植民地であるフィリピンについても「これだけ資本投下してるのに民主主義が育たないって不思議だなぁ」みたいな暢気な意見を書いてますが、武力を背景にした交渉に常に曝される非植民地側の視点ってこの人には無いんだなぁという、頭のいい人間が見落としてしまう瞬間みたいなものも見れて面白かった。

この本は、米大統領や国防総省のアドバイザーも務めるカプランの新作である。

これを読んでも「中国と南シナ海は、この先こうなる」とはっきり結論が出るわけではない。

しかし、「米政権に近く、影響力のある人物が、中国や南シナ海諸国をどう見ているか」を知るために、必読の本である。

構成は、まず南シナ海と中国の現状、その後、ベトナム、マレーシア、シンガポール、フィリピン、台湾の過去、現状、未来について書かれている。

この地域の地政学は単純で、「中国という巨大な国と、その他の小国群」という構図。

では、小国群はいかに生き残りをはかるのか?

結論は、「米国に接近することで」が唯一の答え。

では、米国はどうするか?どうするべきなのか?

米大統領のアドバイザーがどのような結論を出しているのか?

是非この本を読むことで知っておいてほしい。

近年、日本企業は、賃金上昇が著しい反日国家中国から逃げ出し、南シナ海諸国(ベトナム、インドネシアなど)に拠点を移しつつある。

しかし、移った先の国と中国、米国の関係はどうなのか?

あらかじめ知るためにも、この本は役立つことだろう。

この本は日本人の為に書かれた本ではない。
あくまでも米国人の為の本であり翻訳者がこの本の価値を見いだし翻訳して日本人に紹介しているに過ぎない。
カプラン氏の本は学者にありがちな専門分野内での他の学者の引用に留まらず、哲学者や文化人類学者の文章が引用され無理の無い文章運びになっている。

南シナ海をカリブ海と比較し、カリブ海の米海軍制覇が米国世界覇権の先駆けになった様に
南シナ海の中国制覇が中国世界覇権の先駆けになりかねないと解説している。
地政学は地形から国や集団の性質や行動を分析する学問である。
この比較は正しい。

20世紀は太平洋圏の時代で、覇権を日米で争った様に
21世紀はインド洋圏が世界の中心となり、太平洋周辺国からアクセス可能な国がここで覇権を争う。
マラッカ海峡の重要性が更に増す。

戦争がアートである様に歴史にも再現性が必ずしも備わらない。
カリブ海と南シナ海は地政学的な類似点はあるが、中国が覇権を握るとは限らない。
当然南シナ海周辺諸国がカリブ海周辺諸国と国内事情が異なるからだ。
この本では南シナ海周辺国各国を詳細に解説することで
これから南シナ海だから起こるかもしれない歴史的事件をほのめかしたりもしている。

華僑やイスラム教徒が各国内で入り交じり単一民族の日本とは抱えている問題が異なる。
一つにまとめあげるには独裁者の存在が必要な事を認めている。
著者は柔軟な頭の持ち主である。

各国毎に解説しているが米国の影響力が大きい事は共通している。
ただし、自国領海を自ら守らないと米国はプレゼンス出来ない。
その意味でベトナムを最も重要視しているのは正しい。
中国の海洋進出に最も抵抗しているのはベトナムだからである。

この本を読んだ米国人は米ソ冷戦終結後、極東よりも東南アジアの方が重要である事を確認する事になる。
ロシアを封じ込めるよりもインド洋へのアクセスの方が重要と分かれば
軍縮された限られた兵力は南シナ海に置かれる事になる。

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