マルテの手記 (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトルマルテの手記 (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者リルケ
販売元新潮社
JANコード9784102175033
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » ドイツ文学

購入者の感想

 この本を最初に手にとったのは、まだ中学生のころだったと思います。そのときの本をまだ持っています。「断片的感想、備忘ノート、散文詩の一節(・・・)、日記、手紙などを一冊にまとめ上げた手記体の小説」とカバーの宣伝文にあり、明確なストーリーがないようなので、きっとむずかしいのだろうなと思いつつ読み始めたのですが、冒頭の一節ではまりました。

 「人は生きるためにこの都会へ集まってくるらしい。しかし、ぼくはむしろ、ここではみんなが死んでゆくとしか思えないのだ。」

 続けて描かれるパリの街頭の描写は、都会の華やかさはまるでなく、そこに住まう人々は孤独で、互いに語り合うこともなく、己の運命とだけ向き合わされているような貧しい人々ばかりなのです。そんな病的なまでにモノクロームの描写にとらわれたのは、大人になり始めた私の心の中の孤独とあまりにもぴったり響き合うところがあったからです。

 この本を読んだことはその後の私の人生を決定したということができます。都会の中の孤独な生の予感。自分自身の死を死ぬために従僕たちや猟犬を引きつれ、大騒ぎして屋敷のなかをあちこち病床を移してまわった、主人公の祖父、侍従ブリッゲのような、壮絶な死は望むべくもなく、無名の死を死ぬのなら、せめて自分が生きた証を作らなければならない。

 まずは勉強していい大学に入ろう。その中で自分が自分である生を見出していこう。そう決めて入った東京の大学で見えてきた未来は、マルテのような不安に満ちた生き方ではなかったものの、自分が生きた証を残せるほど確実なものではなく、卒業して、就職して、入った会社を辞め、別の会社に就職して、ただいたずらに時間だけが流れていきました。

 でも結婚して子供ができると、最初の願望はあっさりかなってしまったような気がしました。単純な話です。以来この本は私から少し遠ざかりましたが、こんどは青春の感動の正体をもう一度確かめるために原文で読もうと、10年ほど前から辞書を片手に少しずつ読んでいます。

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