道徳性の起源: ボノボが教えてくれること の感想

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参照データ

タイトル道徳性の起源: ボノボが教えてくれること
発売日販売日未定
製作者フランス ドゥ・ヴァール
販売元紀伊國屋書店
JANコード9784314011259
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 生物・バイオテクノロジー » サル・人類学

購入者の感想

進化心理学の観点から、霊長類で進化した道徳性とその延長上のコミュニティ優先主義や宗教について、事例を通して多くのことを教えてくれる。三度読み直して、やっと理解できた気がする。
1970年代にカーネマンが「人間はおおむね合理的であり、その考えはまずまず理に適っている」と言う当時の一般的な認識を科学的に否定したが、これをさらに進め、道徳や宗教、哲学と言う人間性の中核的領域でも合理的な議論の無意味さを語ってくれる。「情動と認知能力は分かち難く絡みあっている。そのうえ、両者の相互作用は、人間とその他の霊長類でおそらく酷似している」。ジョナサン・ハイトの「情動的な犬とその合理的な尻尾」が引用されているが、理性と感情の因果関係を人々が誤って認識してきたこと、理性を持ち出さなくも類人猿は人間と同じように道徳的に行動していることを語る。
人間は、霊長類起源の道徳(「一対一の道徳」と呼んでいる)の上に、人の評価や評判、規範の共同作成など、人間特有の「言語」を活用しながら「コミュニティへの気遣い」を発達させてきた。「我々の生存は、良好な関係と協力的な社会にかかっている」から、人類はこのように生物学的に進化してきたのだ。
明治維新からこれまで、日本は多くのものを西欧から学んできたが、その多くも実は犬の尻尾(=後付けの合理性)にしか過ぎないと言うことでもあるのかも知れない。たぶん、そうだ。

 フランス・ドゥ・ヴァールは、世界的なベストセラー『チンパンジーの政治学』(産経新聞出版)を生んだ、動物行動学の第一人者である。と同時に、『利己的なサル、他人を思いやるサル』(草思社)をはじめとして、道徳の進化について先駆的に取り組んできた研究者でもある。そんな彼の待望の最新作が、本書『道徳性の起源』である。
 本書が扱っている対象はおもに3つある。すなわち、(1) 道徳性の進化、(2) ボノボなど霊長類の社会的行動、(3) 近年活気づいている無神論(ネオ無神論)、がそれである。本書のタイトルが「道徳性の起源」で、原書のタイトルが「ボノボと無神論者(The Bonobo and the Atheist)」であるのは、その点を反映してのことだろう。
 まず(1)に関しては、ドゥ・ヴァールは前著に続く議論を展開している。前著『共感の時代へ』(紀伊國屋書店)では、「共感(empathy)」に〈連続性〉と〈レベル〉の認められることが強調されていた(本書第5章も参照)。そして本書では、それに続く議論として、「道徳性」にも〈連続性〉と〈レベル〉のあることが説かれている。すなわち、ドゥ・ヴァールによれば、道徳性はヒトと類人猿(あるいは霊長類)に共通するものでありながら、ヒトの道徳性はそこからさらに進化して、それ特有の形になったのである。もう少し詳しく述べると、道徳性には「一対一の道徳」と「コミュニティへの気遣い」という要素があり、そのどちらもがヒトと類人猿に共有されているものの、とくに後者が高度に発達したものがヒトの道徳性だ、とそういうのである(おもに第6章と第8章)。
 では、先の(3)についての議論はどうだろうか。ここでいう「ネオ無神論」とは、クリストファー・ヒッチンス、リチャード・ドーキンス、サム・ハリス、ダニエル・デネットの4人に代表される、近年の攻撃的な無神論のことである。そうした立場に対するドゥ・ヴァールの態度は、科学と宗教に関する彼の見方と結びついている。ドゥ・ヴァールの見るところ、科学と宗教は競合するものではない。というのも、そもそも両者では扱う対象と領域が異なっているからである(cf

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