五社英雄 (文藝別冊) の感想

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参照データ

タイトル五社英雄 (文藝別冊)
発売日2014-11-29
製作者春日太一
販売元河出書房新社
JANコード9784309978512
カテゴリジャンル別 » エンターテイメント » 映画 » 日本映画

購入者の感想

                   
             映画監督・五社英雄!

 五社監督といえば、『鬼龍院花子の生涯』『陽暉楼』『櫂』『極道の妻たち』『吉原炎上』『

五社英雄監督の作品は数本見ただけでしたが『天才 勝新太郎』『なぜ時代劇は滅びるのか』を書いた春日太一さん編集と知って買いました。監督のテレビ局員時代から晩年までを、仕事で関わった皆さんへのインタビューで浮き彫りにしていく構成。五社監督の強いところ弱いところが同時代でも違う視点で述べられていて、それぞれの話がとても興味深いものでした。どちらの像も本当なんですよね。

軸は五社監督ですが、業界を知らない私は出てくる皆さんの「映像に賭ける熱」を羨ましく思いました。役者さん、技術さん、キャスティング担当やプロデューサー、脚本家、みんなが「面白い画を撮る」ことだけに集中していた時代。それが五社監督の引力に導かれて形になっていく様子。個々のインタビューを読み終わると一つの大きなイメージというかグループというか、今は見かけないクリエイターのこだわりのようなものが浮かんできて、読んでよかっとと思いました。

「生きざま」なる日本語は出来れば使いたくないんですが、このムック本を読むと五社監督の凄絶で見事な仕事っぷり、作品群、人生には、「生きざま」という言葉がすごくしっくりくる気がします。浅草に生まれ、15歳で予科練に志願し、16歳で終戦を迎えたという、この世代、この生まれでなければできなかった作品群であること、フジを退社後、貪欲に監督の機会をうかがい、不退転の決意で仕事に臨んだこと、癌で弱ってヘロヘロになりながら晩年の作品を完成させたこと等、氏の凄まじい人生に感じ入りました。

このような凄い本が出来上がったのは、春日氏の功績が大です。氏自らが、若いころの同僚から晩年の癌で死ぬ間際に仕事をした人まで、広範な人たちにインタビューし、五社氏の本質に迫る、興味深いエピソードやその方の思いを、実に豊富に引き出しています。現場の記録係や照明、カメラマン、助監督などスタッフに愛され、尊敬されていたことが感涙もののエピソードで語られます。女優や男優に惚れて演技をつけ、俳優たちも意気に感じて監督に身をゆだねていたこと、プロヂューサーや脚本家の話からは、(特に最盛期のものは)原作を大きく踏み出して、まさに五社監督独自の映画世界が築かれていたことが理解できます。(生きながら伝説となっている)安藤昇氏の登場には驚きました(この方のみ間接インタビューのようですが)。

いろんな面白いネタも満載で、「人斬り」に出演した三島由紀夫のエピソード、宮尾映画の成功の後、松竹・奥山プロデューサーと「座頭市」の企画を話し合う場で、勝新太郎と「カツカレー」の食べ方を巡って大ゲンカしたこと等、笑ってしまいました。映画界の内輪のエピソードを扱った本はどれも面白いのですが、その中でも格段の面白さでお勧めです。

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