瀬島龍三―参謀の昭和史 (文春文庫) の感想

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参照データ

タイトル瀬島龍三―参謀の昭和史 (文春文庫)
発売日販売日未定
製作者保阪 正康
販売元文藝春秋
JANコード9784167494032
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

大本営参謀から戦後シベリア抑留を経て、商社の経営幹部に転じ、中曽根内閣で臨調委員として日本国家のあり方形成に参画した瀬島龍三氏についてのレポート。本書の出版当時は山崎豊子氏の小説とオーバーラップした形で瀬島伝説のようなものが流布していた時期であり、その伝説への挑戦という意味でも衝撃的なレポートであったと思われる。
本書は、瀬島伝説の中核をなすシベリア抑留の虚実にまず分け入っていく。その中で瀬島氏が見せたかったもの、隠したかったものを明かし、その中で瀬島氏がとるべきであった、そして取っていない責任のありさまを示す。これは彼の生涯を通じての生き様の典型となる態度であり、そのことを著者は瀬島氏の幼少時から陸軍大学校までの軌跡と商社における活躍の中に見出す。瀬島氏の存在は、常に滅私奉公な能吏、もっとも優秀な参謀であった。組織を動かすことにその能力の本質があり、価値は外生的に与えられ、そして責任を問われない立場であった。
私は、本書の中でもっとも重たい指摘は、瀬島氏が、その抱える秘密を明かさないことも含めて、取るべき責任を一切取っていないという点にあると思う。特に白眉は、本書p.273の財界人の指摘である。瀬島氏は自らが参謀として南の島で死なせた数多くの国民に対してどのような責任を取ってきたのか。そのような人間が公人として日本の将来を語り、そしてこれを実現する立場に立つことをどう考えるのか、瀬島氏はどう考えているのか(ちなみに、本書によれば、瀬島氏の後任の作戦課参謀は自らが死なせた英霊に詫びるべく、終戦後割腹自殺している。)。
瀬島氏という、国家的エリートとして育成され大企業や国家の意思形成において活躍した人物の生き様を通して、日本的エリートのあり方を考えることのできる、奥深いノンフィクションである。

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