シンプル病理学 改訂第6版 の感想

南江堂のシンプルシリーズ病理学編。
免疫応答としての炎症、グリオーシスとしての腫瘍、血管などの物理的な塞栓、
といった具合に局所の病理（病因）を図と写真付きで平易に説明している。
これ1冊で、局所を問わず症状の原因（メカニズム）が類型的に分かり、
さらに進んで、病気そのものの原因論を探求してゆくにも入門書となる1冊である。
状態図と基礎的な関連データを示す表が充実し、解説にはシンプルな丁寧さがあるので、
初学者でも理解に苦しむことは少ないであろう。

病因論としては、通常1.外因性（外傷性）、2.内因性（孤発性）、3.心因性（機能性）、
などと分けることが多いようであるが、本態性というのもあり、
血圧や血糖値など自律神経系統に関する場合（恒常性維持）が中心であろう。
1.は病気というよりもむしろケガに近く、2.はいわゆる原因不明、3.は一過性または恒常性の機能低下など、
顕著な構造病変が観察されにくい場合で、それぞれ物理的、遺伝的、化学的な原因が想定されている。
本書では、こうした類型論（タイポロジー）に基づき、疾患や症候群の種類を問わず、
病理学的原因により整理されているので、目で追いやすくなっている。

対象はメディカル関連者などが想定されているが、医歯薬看護系のみならず理工学系や農学系でも、
how it happensという点では、関連する部分もあると思われ、参考になるのではと思います。
その意味で、標準的な病態生理を効率的に理解・感得するためのよいテキストとして、
より広い相におすすめです。