サウンドとメディアの文化資源学: 境界線上の音楽 の感想

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参照データ

タイトルサウンドとメディアの文化資源学: 境界線上の音楽
発売日販売日未定
製作者渡辺裕
販売元春秋社
JANコード9784393332948
カテゴリエンターテイメント » 音楽 » 音楽理論・音楽論 » 音楽学・音楽教育学

購入者の感想

音楽とは「どんな時代・場所でも愛される普遍的な価値を持つもの」。そんな漠然としたイメージを私たちは持っている。
しかし同じ音でも、それをとりまく社会環境によって称賛されることもあれば、蔑まれたり生活音として聞き流されることもある。「音」は人々が「文化的に価値がある」と感じることによって「音楽」に「なる」。
本書はこうした視点に立って、明治以降の日本における音の文化と社会の関係を考察する。

俎上にのせる主な題材は、寮歌、チンドン、民謡、民族舞踊、ソノシート、映画の語り、鉄道音など。こうした音を、当時の人々がどのように受け止め、向き合い、育てていったかを、膨大な資料を駆使して生き生きとした筆致で描き出す。「いわゆる音楽」と「音」の境界線上にある題材をあえて選ぶことで、「音楽」の既成概念を取り払い、さらに音楽にとどまらない文化全般との向き合い方を考える視点を提示する。音楽論というより社会学的な研究書である。
パン工場経営者がバナナのたたき売りの口上保存の中心人物となった話、パリで活躍したショパンの母国ポーランドが、コンクール開催を通じて権威を確立していった経緯、宝塚歌劇団が録音テープ2000本に及ぶ日本舞踊の調査を行っていた歴史など、多彩なエピソードが盛り込まれており雑学本としての魅力もある。

半分以上は、2004年から2010年にかけて発表した論文を下敷きにしている。また『聴衆の誕生』『日本文化 モダン・ラプソディ』『歌う国民』など、過去の著書で取り上げた題材が重複して登場する。数十年来の研究の集大成の様相を呈しており、4,200円という価格にも納得がいく。
500ページを超える大作で、1章が薄い新書本程度の分量がある。題材の背景にある社会と文化の状況を独自の視点で分析し、それを踏まえて、取り上げる題材と、関わる人々、受け取る人々が変化していった過程を、丁寧にたどる。そうしたアプローチが、複数の力学が働く中で音楽文化が(決して直線的に変化するのではなく)複数の方向へ変化をとげていくストーリーを浮かび上がらせていく。鉄道ファンの興味対象と、鉄道雑誌をはじめとするメディアの編集方針の変遷などは圧巻である。

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