ヒッグス粒子の謎 祥伝社新書 の感想

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タイトルヒッグス粒子の謎 祥伝社新書
発売日2013-10-09
製作者浅井祥仁
販売元祥伝社
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購入者の感想

 2012年7月4日にスイスCERNから「Higgs粒子と見られる新素粒子発見」の発表があり、見当違いの表現も含めて報道を賑わした。この実験の2つの実験装置の1つに携わる日本人グループの物理解析責任者である東大准教授が、Higgs粒子の正しい知見を解説し、加えて素粒子物理全般の最新動向を概説する新書である。

 こういう啓蒙書は、正確性に関する専門家の目と、判り易さを求める素人読者の目と両方を意識する両面作戦になる。その両方の中間に位置する私から見て、本書はこの両面作戦を比較的上手にこなしているのではないかと思えた。

 本書の特に素晴らしい点は、啓蒙書には見掛けない新しい見識が述べられていることだ。例えば(1)Big Bangの説明、特にBig Bangの前のInflation。(2)Higgs場とHiggs粒子の関係、特に粒子が詰まった空間が場ではないこと、(3)発見されたHiggs粒子の質量が超対称性理論を支持していること、(4)暗黒物質の候補、(5)重力が弱い理由の推論、などである。新しい啓蒙をしてくれている。

 但し7月の発表以降の熱が冷めぬうちに早くと出版を急いだのか、表現には改善の余地が残った。例えば図38の「ヒッグス粒子」とある1か所は「ヒグシーノ粒子」の誤り。64頁の「光のスピードからどのくらい遅くなるかを示す「慣性質量」」は説明が飛躍し過ぎ。123頁の「反粒子は特殊相対性理論に基づく」も説明不足で読者を迷わす。読者への思いやりから全体的に「光子」「エントロピー」という言葉を意識的に避けているのが、反って判り難くしている。26頁以降と162頁以降が重複しているのは初級向けと中級向けの意図だろうか。

 白紙からHiggs粒子を知ろうとする理科系オンチには消化し難いかも知れぬと危惧するが、この表題を見て興味を抱くレベルの素人読者には正確な最新知見が伝わる素晴らしい好著と感じた。

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