文楽へようこそ (実用単行本) の感想

これまでの評論家等が著したものとは異なり、この本は技芸員の目線から文楽を紹介するという切り口で、とても新鮮である。
演目紹介ですら、ところどころに書かれている技芸員の失敗談や本音に思わずつい笑ってしまったり、師匠方の神業的な芸に驚嘆したりと、これまでに例のない、技芸員の言葉からなる語り口調の解説は、初めて文楽に触れる方にとっても、親しみやすさを感じるのではないだろうか。
さらに演目のあらすじの詳細を知りたい場合は、劇場でパンフレットを購入して一緒に読むと完璧でしょう。

一部笑いの要素（技芸員ご本人たちは真剣そのものに違いないのだが）がありながらも、あらためて、文楽という芸のあまりの厳しさと、それに懸ける技芸員のストイックなまでの精進には、圧倒させられる。
さらに、黒門市場や文楽劇場周辺の見どころも具体的に記載されていて、文楽を取り巻く大阪というものへの暖かい愛情も感じられるのがよい。
サイズもコンパクトで写真もとてもきれいなので、是非購入して劇場に持参して実際の舞台を観に行っていただきたい。