ブッダ最後の旅―大パリニッバーナ経 (岩波文庫) の感想

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タイトルブッダ最後の旅―大パリニッバーナ経 (岩波文庫)
発売日販売日未定
販売元岩波書店
JANコード9784003332511
カテゴリ人文・思想 » 宗教 » 仏教 » 仏教入門

購入者の感想

 ゴータマ入滅直前の伝承を表した「大パリニッバーナ」経の日本語訳。教団形成後に恣意的に付け加わったと思しき箇所もかなり多く、寄付された食事は独り占めするなという訳者曰く「下品」な説教(笑)とか、あれだけ否定していた土地寄進をすんなり受け入れる記述などが足されており、この経がまとめられた時点で既に相当の世俗化が教団に起きていたことが分かる。このような矛盾点は訳者の解説が一つ一つ詳しく説明してくれているので、批判的に仏典を読み込むことができるのが嬉しい。

 特に、死亡直前に「自分の遺体にはかかずりあうな」とアーナンダに語った直後に、やたら詳しく遺体の埋葬法を繰り返す記述が加えられており、また結局はこの遺言に反して遺骨や歯を巡る対立が起こり、信者の間では収拾がつかず何とバラモン教の僧侶による仲裁によって8つに焼却後の遺体が分けられるくだりで話が終わるなど、その後の釈尊の神格化と仏教教義の変容を考える上で、非常に興味深い本である。人格・偶像崇拝ではなく「法への帰依」を説いたゴータマの教えと、聖体・偶像崇拝に走りたがる信者達の素朴な思いの擦れ違いは、彼の死後直後から始まっていたのだろう。

 同じ岩波文庫「ブッダのことば スッタニパータ」の方が遥かにゴータマの肉声が伝わってくるので、そこが星ひとつ減点理由だが、このように彼の「智慧」を巡る悲劇に思いをはせずにはいられない一級資料ではある。

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