日本人へ 危機からの脱出篇 (文春新書 938) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル日本人へ 危機からの脱出篇 (文春新書 938)
発売日販売日未定
製作者塩野 七生
販売元文藝春秋
JANコード9784166609383
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 著者別 » さ行の著者

購入者の感想

塩野七生という女性は、いったい何者なのかと思う。
出せばベストセラーの人気作家であり、国家から終身年金が支給される文化功労者でもある。また、「水」の専門家たる皇太子さまがローマに立ち寄られた際は、古代ローマの街道や水道跡の案内役を仰せつかり(P28)、さらには、ときの政権トップ(小渕首相)から、「自民党の支持率をアップさせる方策をうかがいたい」と頭を下げられ、ホテルのスイートルームに呼び出される。
そのような塩野さんが、「内定がもらえないでいるあなたに」(P63)と題した章で、内定をもらえず、人格までも否定された気分でいる女子学生に対し、自分自身唯一の就活を語っているのが興味深い。

(自分では、「高校時代は落ちこぼれ」、「大学にも残れなかった」と謙遜しているが、当時、天下の秀才を集めた日比谷高校から、学習院大哲学科に学んでいる)

・・・書類選考は通ったらしく、面接に進む・・・
社長自ら、「速記はできるか」、「英文タイプは」とたずねる。答えはいずれも「ノウ」。
「では、一体全体、あなたは何ができるのか」と問う社長に、「六ヶ月の間お使いいただければ、おわかりになります」。
景気が上向きの時期にもかかわらず、結果は不採用。
ところが、自分の娘の力量を誰よりも見抜いていたであろう母は、笑いながらこう言う。「月並みでないあなたを月並みな男が採ったとしたら、そのほうがおかしいわよ」と。

一方、男尊女卑が当たり前の半世紀も前、彼女の将来を見通していたかのような人物がいたのには驚かされる。
名前は伏せられているが、当時経営の神様と評判の財界大物が、アルバイトの身分であった一女性の直訴を受け入れ、イタリアへ遊学させたのである。
「あなたへの費用はハンブルク支店の雑費から出すのです。だから、わが社のことなどは気にしないで、地中海を存分にみていらっしゃい」。
この一言が、後の日本国民の、ローマ帝国をはじめ、中世ヨーロッパに対する知的レベルを格段に向上させたことだけはまちがいない。

 日本人には簡単に謝る傾向があるのは知っていたが、帰国早々に眼に入ってきたのが、アメリカには陳謝し沖縄に行っては頭を下げる首相の姿だった。つい先頃までは頭を下げるのは大会社の社長や大銀行の頭取だったが、この頃ではそれを見ないのは、彼らはもはや、何もしないと決めたからであろうか。何もしなければ、過ちを犯すこともないからである。
 機知に富んだエッセイ集は、冒頭こんな厳しい一節から始まる。初出は文藝春秋2010年5月号-2013年10月号。半世紀もの間イタリアに住み、世界・日本を定点観察。「車文化の違い」では、トヨタの問題がなぜアメリカでは大問題になったのに欧州ではならなかったのかを考察。「最近笑えた話」では、楽天・ユニクロの英語公用語化に疑問を呈し対案を提示する。震災時の次の一節も良かった。
 イタリアの週刊誌に被災地の子供三人を写した写真が載っていた。(中略)この三枚の写真につけられていたイタリア人の記者のコメントは、次の一行だった。「面(つら)がまえがいい。日本は必ず再興する」

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

日本人へ 危機からの脱出篇 (文春新書 938)

アマゾンで購入する
文藝春秋から発売された塩野 七生の日本人へ 危機からの脱出篇 (文春新書 938)(JAN:9784166609383)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.