手ぶくろを買いに (日本の童話名作選) の感想

20年来の黒井健さんの絵のファンです。特に、黒井さんの描くほのかな橙色の灯りが大好きです。色鉛筆で描かれているのですが、黒井さんの絵は自分がどんな心理状態にある時でも変わらず優しく迎えてくれます。新美南吉のこの名作は、幼い頃幾度となく目にし、耳にしましたが、その懐かしい記憶が、黒井さんの手にかかると申し分なく蘇る。いやそれ以上に胸に迫るものがあります。子狐の不安な気持ちや母狐の心配が、優しい店の主人によってよろこびに変わっていく様子が、グラデーションの中で見事に描かれています。冬の暖かさは、そこにともる灯りと共に、相手を思いやるこころに宿る、そんな大切な発見をさせてくれる本当に素晴らしい絵本です。