Sweet Tooth: A Novel の感想

Ian McEwan の最新作。
たまたま John le Carre の Our Kind of Traitor を読んだあとにこの本を手にし、またもや MI-5 の世界、と思ったが、
これはまた前者とは全く異なった切り口で MI-5 の世界を描いていて、興味深かった。

１９７０年代のイギリス。経済的にも政治的にも疲弊している状況の中で、MI-5（イギリス情報局保安部）で Sweet Tooth と名づけられた
あるプロジェクトが立ち上げられる。東西冷戦のさなか、ソヴィエト共産主義への脅威、アメリカへの対抗心などが背景にある。

ケンブリッジ大学で数学を学びながら文学にも傾倒し、大学教授とのひと夏の愛に包まれ、その後 ロンドンで MI-5 に就職する Serena、
南部の街 ブライトンで教師をしながら、エッセイや小説を書いている青年 Tom Haley、それぞれの家族や同僚、友人、閉塞した時代のなかで
人生を模索する者たちが、情感豊かに描かれている。

MI-5 の中の人間模様やIRAのテロなどの国際情勢、Tom が書いた短編のサマリーが織り込まれたり、彼らが語り合う文学についてのあれこれ、
そしてSerena の愛のゆくえ････　　Ian McEwan 特有の物語の構成の奥深さとあいまって、興味はつきなく、読みどころの多い小説となっている。
McEwan の作品の中では、Atonement に次ぐおすすめの１冊です。