歴史をつかむ技法 (新潮新書) の感想

おおよそ二種類の見識を着実に得ることのできる本で、一つは歴史学とはどのような営みかを知ることができ、もう一つは、日本史の通史（主に近代以前）についてざっくりとだがしっかりと学ぶことができる。歴史小説と歴史学との違いについて明瞭に論じたり、ある歴史的出来事の年号をめぐる学説の並存の意味などについて巧みに解説することから、歴史についてただ語り考えることと、歴史を学問的に考証することとの違いがはっきりと示され、あるいは、最新の研究状況や学会での動向を踏まえた上で、日本史の流れをその核心的な部分を中心にわかりやすく講じてくれている。
歴史に法則はあるのか？歴史を学ぶ意義とは？教科書は信じていいのか？「司馬史観」「網野史学」とは何か？――興味津々の話題がところどころでふりまかれながら、最後までためになる話がたっぷりと展開されている。歴史学や日本史をこれから本格的に学んでいきたい読者に大推薦したい作品である。