合理的なのに愚かな戦略 の感想
参照データ
タイトル | 合理的なのに愚かな戦略 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | ルディー和子 |
販売元 | 日本実業出版社 |
JANコード | 9784534052278 |
カテゴリ | 本 » ジャンル別 » ビジネス・経済 » オペレーションズ |
購入者の感想
著者は存じ上げないが、タイトルとレビューをみて購入。
クレバーな著者で、各事象を細かく調べて様々な例が載っているので
知らないことも多くそういった雑学的な部分や
各企業の歴史などは勉強になる。
前書きや本書全体として説いている
「戦略は論理的なイメージがあるが、
どんなに論理的にデータから組み立てても、
最終的な判断と行動は必ず感情的なものが大きく事象に影響する」
これが経営者の判断ミスにつながる、という視点も面白い。
ただ、残念なポイントが多く、大きくは3つ。
1つ目の最も重要な点は、
各事例が、どれもあとから結果を見てできる否定をしてしまっている点。
例えば2章に吉野家の戦略に付加価値・高価格帯を維持しなかったことが戦略ミスという旨の記載がある。
これはあとから結論からみればだれでも言える話で、あの段階での情報でどういう判断をすべきだったのか、
逆に低価格にしたことで得たものもありそことの兼ね合いはどうのかという考察がない。
3章の資生堂も、流注網構築で成長したためプロダクトのブランド戦略が弱いという話だが、
逆にこの流通網によりこれだけの規模まで資生堂は大きくなっており、
それによる得たものは大きく、
それをどの段階で変えていくべきだったのか、その変化すべき兆しはなんだったのか、
このあたりが聞きたいところだがそこの考察がない。
著者が経済学者ということなのでやむを得ない部分かもしれませんが、
現場の経営や戦略立案で考えた際の苦悩に対する答えはあまり期待はできない。
2つ目は、「本書としてではどうすればいいかということはほとんど記載がない」こと。
前書きと数ページを読めば内容が足りてしまう。
例えば4章はコミュニケーションは論理より感情的なものが大きい的なことの記載があるが、
それの対策が「企業はもっとストーリーを大切にしよう」
クレバーな著者で、各事象を細かく調べて様々な例が載っているので
知らないことも多くそういった雑学的な部分や
各企業の歴史などは勉強になる。
前書きや本書全体として説いている
「戦略は論理的なイメージがあるが、
どんなに論理的にデータから組み立てても、
最終的な判断と行動は必ず感情的なものが大きく事象に影響する」
これが経営者の判断ミスにつながる、という視点も面白い。
ただ、残念なポイントが多く、大きくは3つ。
1つ目の最も重要な点は、
各事例が、どれもあとから結果を見てできる否定をしてしまっている点。
例えば2章に吉野家の戦略に付加価値・高価格帯を維持しなかったことが戦略ミスという旨の記載がある。
これはあとから結論からみればだれでも言える話で、あの段階での情報でどういう判断をすべきだったのか、
逆に低価格にしたことで得たものもありそことの兼ね合いはどうのかという考察がない。
3章の資生堂も、流注網構築で成長したためプロダクトのブランド戦略が弱いという話だが、
逆にこの流通網によりこれだけの規模まで資生堂は大きくなっており、
それによる得たものは大きく、
それをどの段階で変えていくべきだったのか、その変化すべき兆しはなんだったのか、
このあたりが聞きたいところだがそこの考察がない。
著者が経済学者ということなのでやむを得ない部分かもしれませんが、
現場の経営や戦略立案で考えた際の苦悩に対する答えはあまり期待はできない。
2つ目は、「本書としてではどうすればいいかということはほとんど記載がない」こと。
前書きと数ページを読めば内容が足りてしまう。
例えば4章はコミュニケーションは論理より感情的なものが大きい的なことの記載があるが、
それの対策が「企業はもっとストーリーを大切にしよう」
「顧客第一」や「顧客志向」というスローガンは誰にも反対されないスローガンとして、自己正当化のために経営者が濫用していることを著者はまず書いている。また、「優良企業は顧客の声に耳を傾けて競争に負ける」というくだりも実にParadoxである。スティーブ・ジョブズのような真のイノベーターは消費者調査を無視したとしている。なぜならば消費者は自分たち消費者が何(いかなる消費財)を欲しているのか知っていないことをジョブズは知っていたからだ。
第2章のプライシングの逆説も興味深い。「コスト競争には強いが価格競争には弱い日本企業」として、著者は価格競争の弱さを「コミュニケーション能力の低さ」だと断じている。
「パターン認識で過去にこだわる」というくだりもおもしろい。吉野屋の牛丼材料選択の事例である。過去の成功パターンにこだわって大艦巨砲艦隊決戦思考から抜けきれずに敗れた日本海軍のことが私は脳裏に浮かんだ。
第3章のブランドの逆説では、「トヨタにはチャネル戦略はあってもブランド戦略はなかった」とし、「資生堂は企業ブランドしかつくれなかった」とする。
第5章の経営戦略の逆説では、「大企業病の正体は人間の脳の仕組みにある」として人間の進化と生存確率の経験値から「変化を嫌い現状を維持したがる」パターン思考が脳内にあるためだと主張するくだりでは、著者の魅力的な真骨頂爆発である。
本書は、経営戦略とマーケティングと企業文化とブランド論と組織論と、さらには進化論や人間の神経科学にまできわめて広範な分野に触れつつ様々な経営のパラドックス論を展開している。この著者は、よくある左脳だけで論理をいじくり回すような机上の空論を振り回す”センセー”とは違う。著者ルディー和子氏は右脳と左脳を駆使して我々に現在の企業戦略で苦しむ経営者たちがいったいどのように正しい歩を進めるべきか、どのようにしたら自ら墓穴を掘らなくて済むのかを明確に示してくれている。本書は経営戦略の雄編としてこれから長く多くの経営者や企業家(起業家)たち等によって読み継がれて行くであろう。
第2章のプライシングの逆説も興味深い。「コスト競争には強いが価格競争には弱い日本企業」として、著者は価格競争の弱さを「コミュニケーション能力の低さ」だと断じている。
「パターン認識で過去にこだわる」というくだりもおもしろい。吉野屋の牛丼材料選択の事例である。過去の成功パターンにこだわって大艦巨砲艦隊決戦思考から抜けきれずに敗れた日本海軍のことが私は脳裏に浮かんだ。
第3章のブランドの逆説では、「トヨタにはチャネル戦略はあってもブランド戦略はなかった」とし、「資生堂は企業ブランドしかつくれなかった」とする。
第5章の経営戦略の逆説では、「大企業病の正体は人間の脳の仕組みにある」として人間の進化と生存確率の経験値から「変化を嫌い現状を維持したがる」パターン思考が脳内にあるためだと主張するくだりでは、著者の魅力的な真骨頂爆発である。
本書は、経営戦略とマーケティングと企業文化とブランド論と組織論と、さらには進化論や人間の神経科学にまできわめて広範な分野に触れつつ様々な経営のパラドックス論を展開している。この著者は、よくある左脳だけで論理をいじくり回すような机上の空論を振り回す”センセー”とは違う。著者ルディー和子氏は右脳と左脳を駆使して我々に現在の企業戦略で苦しむ経営者たちがいったいどのように正しい歩を進めるべきか、どのようにしたら自ら墓穴を掘らなくて済むのかを明確に示してくれている。本書は経営戦略の雄編としてこれから長く多くの経営者や企業家(起業家)たち等によって読み継がれて行くであろう。