GOLDEN☆BEST 藤圭子ヒット&カバーコレクション 艶歌と縁歌 の感想

１枚目が彼女の持ち歌。２枚目がカバー曲という構成がいい。
(３枚組であと１枚はライブ盤をつけていれば完璧）

美空ひばりがあのような伝説になっているのと比べると
確かにデビュー時はとんでもなく売れ、人気もあった、
だけど、引退まぎわはあまりに不遇な歌手だった。
（この辺りの事情は、大下英治著「悲しき歌姫」に詳しい）
ドスの利いた声と浪曲まがいの節回しで、少女のころから
流しで通用し、魂をぐっとつかんでくるよう歌心と若さとを
あわせもった天性の歌手だった。美空ひばりと並び称される
実力をもった歌手だったと思っているし、昔のアルバムを聞
いてもあらためてそうおもう。

１０年の歌手活動を終えて引退の際に、追われるように渡米
した彼女は、後年、娘の日本での成功をどう受け止めたのだろう。
意趣返しがなったとでも感じたのだろうか。

カバー曲がことごとく彼女の持ち歌に聞こえ、下手をすると
オリジナルを表現力で凌駕することさえままあるほど。
曲がよくてまあプロ歌手が歌えばそれなりに受けるような場合
でなく、なんでもない曲でも声で魂を吹き込むような感じで、
曲そのものよりもまず、その声を聞いていたいと思わせるよう
な歌手。もう、二度と出ないのでしょうね、こういう歌手は。
「夢は夜ひらく」以外、思い浮かばない方は、これを聞いて
他の曲を聞いてみてください。所謂、ド演歌も彼女の声なら
聴けます。

40年前、私は小学生の4年生くらいでした。
10才年上の藤圭子と言う歌手が妙に不思議でした。
テレビに映る彼女はいつも無表情でまるでお人形のようでした。
その後、藤圭子の歌を聴く事もなく、彼女の存在に関心を寄せる事もなく過ぎました。

自分でも、何故このCDを購入したのかよく解りません。
届いたCDは数日間、開封される事もありませんでしたが、今日昼食を採りながら何気なく
再生してみました。

聴いて驚きました・・・
まるで、タイム・マシン・・・
生々しい彼女の迫力に富んだ声、懐かしいメロディー・・・

私は、暫くの間40年前の子供の頃に引き戻され、あのお人形のような藤圭子が瞼に蘇りました。

50歳前後の仕事に疲れた方に是非お勧めします。

藤圭子と言う歌手が、我々の脳裏に焼き付けていた何かが明日からの勇気に繋がると思いました。