絶対貧困―世界リアル貧困学講義 (新潮文庫) の感想
参照データ
タイトル | 絶対貧困―世界リアル貧困学講義 (新潮文庫) |
発売日 | 2011-06-26 |
製作者 | 石井 光太 |
販売元 | 新潮社 |
JANコード | 9784101325323 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » マスメディア » ジャーナリズム |
購入者の感想
1日1ドル以下で生活している人 12億人(約5人に1人)。
ドキュメンタリーで海外の貧困者を目にすると、日本に生まれた幸運を感じることがある。と同時に、テレビカメラの向こうから見せる彼らの笑顔は、そういう思いを抱いた後ろめたさを拭い去ってくれるような気がする。それでも彼らは前向きに生きているのだと。
本書は、アジア、中東、アフリカ諸国の貧困地域の実態を講義形式であらわしたものである。サブタイトルの「貧困学」とは、貧困問題を統計的な数字だけではなく、日々の暮らしといった小さな事を多視点から捉えることだ。
「貧困や災害といった極限状態にあればあるほど、多くの視点で物事を考え、向き合っていくことが重要になってきます。私たちは画一的に動くのではなく、あらゆる人々の存在を認め、個々がそれぞれ何ができるかを考えていかなければならないのです。」
貧困地域に生きる人々と生活を共にした著者が提唱するだけに、実にリアルで、説得力がある。
本書は、スラム編、路上生活編、売春編の三部構成全十四講で構成されている。路上生活者の性生活など、面白おかしいエピソードが散見されるのだが、決して不真面目な感じではない。むしろ、貧困の中にもごく普通の人としての営みがあることを、あらためて認識する。
ただ、本書を読むとドキュメンタリーでは窺い知ることのできない、真実の貧困問題を発見することになる。物乞いに対する喜捨というシステムが、福祉制度の変わりとして人々の最低限の生活を保障していること、イスラームの一夫多妻制が、困っている女性を助けるためのアッラーの教えであることなど初めて知ることが多い。路上の生活者が次から次へ子供を産み貧困を連鎖させたり、多くの貧困者が紛争地域へ出稼ぎにいき命を落としていることなど悲しい実態も明らかになる。
売春で子供を生んでしまった売春婦の話が印象的だ。子供らに自分の仕事場の手伝いをさせることで、その仕事=売春を憎み、間違った道に行かないようにしているという。表層的なことだけでは分からない愛情がここにある。「貧困学」は確かにものの見方を変えてくれるようだ。
ドキュメンタリーで海外の貧困者を目にすると、日本に生まれた幸運を感じることがある。と同時に、テレビカメラの向こうから見せる彼らの笑顔は、そういう思いを抱いた後ろめたさを拭い去ってくれるような気がする。それでも彼らは前向きに生きているのだと。
本書は、アジア、中東、アフリカ諸国の貧困地域の実態を講義形式であらわしたものである。サブタイトルの「貧困学」とは、貧困問題を統計的な数字だけではなく、日々の暮らしといった小さな事を多視点から捉えることだ。
「貧困や災害といった極限状態にあればあるほど、多くの視点で物事を考え、向き合っていくことが重要になってきます。私たちは画一的に動くのではなく、あらゆる人々の存在を認め、個々がそれぞれ何ができるかを考えていかなければならないのです。」
貧困地域に生きる人々と生活を共にした著者が提唱するだけに、実にリアルで、説得力がある。
本書は、スラム編、路上生活編、売春編の三部構成全十四講で構成されている。路上生活者の性生活など、面白おかしいエピソードが散見されるのだが、決して不真面目な感じではない。むしろ、貧困の中にもごく普通の人としての営みがあることを、あらためて認識する。
ただ、本書を読むとドキュメンタリーでは窺い知ることのできない、真実の貧困問題を発見することになる。物乞いに対する喜捨というシステムが、福祉制度の変わりとして人々の最低限の生活を保障していること、イスラームの一夫多妻制が、困っている女性を助けるためのアッラーの教えであることなど初めて知ることが多い。路上の生活者が次から次へ子供を産み貧困を連鎖させたり、多くの貧困者が紛争地域へ出稼ぎにいき命を落としていることなど悲しい実態も明らかになる。
売春で子供を生んでしまった売春婦の話が印象的だ。子供らに自分の仕事場の手伝いをさせることで、その仕事=売春を憎み、間違った道に行かないようにしているという。表層的なことだけでは分からない愛情がここにある。「貧困学」は確かにものの見方を変えてくれるようだ。
この本の著者は、長年にわたり世界各地のスラムで取材を行い、レポートを発表している。
ここ数年の“貧困”をキーワードにしたブームに乗った軽薄な本とは一線をなしている好著だ。
著者の視線には、社会学者のレポートのような、統計数字だけから論じる上からの冷たい目線はない。
かつ、悲惨さを強調したいあまり、貧困の表面だけを追った低レベルな突撃レポートでもない。
レポートの対象者の貧困度は、日本ではおよそ考えられないようなレベルだ。
施しを受けるために、手足を切断されたり、目をつぶされたりする子供達。
売春婦になるように育てられる少女たち。
誘拐され、戦場へと狩り出される少年たち。
幼い頃から、貧困ビジネスの道具としてしか生きられない彼らの姿は痛々しい。
しかし、幼い頃から貧困の中で生活し、情報も知識も少ないことからか、
自分達の生き方を、諦観を持って受け入れているような彼らの姿が見えてくる。
著者の論調は、あくまでも淡々としている。
実際にスラムの中に入り込み、彼らと生活をともにしたレポートだが、
必要以上に惨めさを強調するわけではなく、社会正義を掲げ先進国の支援を訴えるものでもない。
「私は、あくまで現状を伝える。後は読者が判断してほしい」というスタンスだ。
しかし、かえってそこに著者の「貧困をなくしたい」という強い意志が感じられた。
ここ数年の“貧困”をキーワードにしたブームに乗った軽薄な本とは一線をなしている好著だ。
著者の視線には、社会学者のレポートのような、統計数字だけから論じる上からの冷たい目線はない。
かつ、悲惨さを強調したいあまり、貧困の表面だけを追った低レベルな突撃レポートでもない。
レポートの対象者の貧困度は、日本ではおよそ考えられないようなレベルだ。
施しを受けるために、手足を切断されたり、目をつぶされたりする子供達。
売春婦になるように育てられる少女たち。
誘拐され、戦場へと狩り出される少年たち。
幼い頃から、貧困ビジネスの道具としてしか生きられない彼らの姿は痛々しい。
しかし、幼い頃から貧困の中で生活し、情報も知識も少ないことからか、
自分達の生き方を、諦観を持って受け入れているような彼らの姿が見えてくる。
著者の論調は、あくまでも淡々としている。
実際にスラムの中に入り込み、彼らと生活をともにしたレポートだが、
必要以上に惨めさを強調するわけではなく、社会正義を掲げ先進国の支援を訴えるものでもない。
「私は、あくまで現状を伝える。後は読者が判断してほしい」というスタンスだ。
しかし、かえってそこに著者の「貧困をなくしたい」という強い意志が感じられた。