甲子園の詩 完全版 敗れざる君たちへ の感想

スポーツニッポンに夏の高校野球シーズンに連載されていた阿久悠さんの「甲子園の詩」を完全収録した本です。

新聞でリアルタイムにいくつかの詩を読みましたが、どれも非常に完成度が高く、新聞掲載だけで終わらせるのでなく本にならないものだろうかと願っていました。

自分が感動した試合を詩にしてくれたときは、「阿久さんも同じような思いを抱いたのだ」と嬉しくなりました。

彼は偉大な詩人であると同時に非常に野球好きでもありました。

1979年第61回大会から（2004年の86回大会だけ休載のため残念ながら収録されていませんが）
死去する前年の2006年の第88回大会（あの早稲田と駒大苫小牧戦の再試合があった年）までの全ての「甲子園の詩」。

これは甲子園の詩だけではなく、阿久悠が見た高校野球の記録でもあります。

詩が大きな活字で2段組みで載っており、その下に、小さな字で阿久悠氏の観戦記が書いてあります。
その観戦記を読んで、「ああ、あの試合だったか」とリアルタイムで観戦した記憶と感動がよみがえってきます。
選手名はほぼフルネーム表記。
プロ野球で活躍しているあの選手は甲子園に出場したのか、という発見もあります。
阿久悠は詩だけではなく、試合の紹介もプロ。スポーツ記者が書いた新聞記事に引けを取りません。

年度別に、その年の注目校選手たちのモノクログラビアも収録されていますし、トーナメント表（得点つき）については、完全掲載。

それと、嬉しいのが巻末に阿久悠自身の年譜と高校名、選手名の索引があること。

松坂大輔、ダルビッシュ有、田中将大、杉内俊哉、藤川球児、和田毅、…と今も現役野球選手だったり、

荒木大輔、愛甲猛、松井秀喜、清原和博、桑田真澄、金村義明、畠山準…かつて甲子園の申し子のように活躍した元「高校球児」たちの記録であり、讃える詩の集大成。

この詩に取り上げられなかった幾多の球児たちの存在に思いを馳せると、やはり甲子園はいいものだ、と。そう思える本です。