考えるER-サムライ・プラクティス の感想

この数年、ポピュリズムというか読者におもねる目を引くだけのタイトルの本が、研修医を対象に数多く出版されいるように思います．タイトル同様しっかりしたエビデンスもなく、どこから持ってきた出典文献のわからない、ただその通りにすればできそうなことが、ページいっぱいにレイアウトされています．いやしくも人の命を預かる医者の卵が、そんな勉強の仕方でいいのか腹立たしくさえ思っています．もっとちゃんと行間まで読んではじめて理解できるのではないでしょうか．
それに比較して，この本はいいとおもいます．エビデンスと臨床経験と、ERシステムまでの三要素をしっかりまとめています．とくにプレディクションルールの章には感動しました．これからはまたこういうコクのあるものが尊重されるようになってほしい．カラーがあればいい、短ければいいなんて読み方は、もうやめたいと思います、

北米型ＥＲ後期研修を修了し、地域医療に従事していますが、後期研修で学んだことが一つの本にまとまった！
そんな印象です。それぞれの科で学び、ＥＲのスタッフから学び、EMAllianceで共有した知識がまとまっています。
それぞれの病気についてハリソンや、tintinalliで復習は必要ですが「現場」でＥＲ医が「考えている」思考過程のエッセンスが簡潔に書かれていると思います。ＥＲで働く方だけでなく当直に入る方に是非お勧めです。
　初版なのでところどころ誤字がありましたが、これは多分第2版を出版される布石なのでは？と思っています。

千葉エリアで非常にアクティブに救急医療を展開されている、東京ベイER部門の先生方が中心になって書かれた本。関東近郊ではそのアクティブさ、断らずにサッと搬送など受け入れて下さる懐の広さが有名です。そんな施設の先生方がお書きになられたということで、興味を持ち買ってみました。
この本のまず素晴らしい所は、従来のERにおける医学的な対応だけでなく、ERを行う上での周辺の部門運営やシステム、また人材管理と言ったマネジメント部分まで総論として盛り込まれていることです。
そのあとに続く疾患各論部分についても、症例ベース且つ網羅的であり、またリアルな現場感が溢れていて、各執筆者の意気ごみやベッドサイドの雰囲気が味わえる記載が多い印象です。「考える」ERという名前にある通り、各論も単なるdidacticな内容に終始せず、思考回路がシェアされている点が大変素晴らしいと感じました。
サムライ・プラクティスというタイトルにサムライブルーの装丁は、日本発の新時代のER世代の幕開けを予感させる洗練された印象です。
サムライがあるだけに第二弾はなでしこ・プラクティスでしょうか？続編が楽しみです。