創価学会と平和主義 (朝日新書) の感想

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タイトル創価学会と平和主義 (朝日新書)
発売日2014-10-10
製作者佐藤 優
販売元朝日新聞出版
JANコード9784022735829
カテゴリ » ジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想

購入者の感想

集団的自衛権をめぐるいくつもの書籍の中で、閣議決定の読み方を真面目に議論しているのはこの本だけではないだろうか。冒頭の集団的自衛権をめぐる議論は、そこだけで価値がある。結局、紙に書かれたものが表現されたものであり、紙に書かれたものが後世に残る。大学で給与をもらっている人物がかえって気楽に無責任な言説を述べている昨今、あえて正面から取り組む文章を書く姿勢はさすがだ。

我が国の安全保障の進路を大きく左右する「集団的自衛権」論議は、センセーショナルなまでにマスコミ界をにぎわした。
しかし、その帰結に対する評価や、背景への言及については、政治レベルのみの皮相的なものがほとんどで、その多くが的外れであった。

今回、発刊された本書は、創価学会とはあまり“そりが合わない”朝日新聞系列からの出版である。
現代、最高峰の論客である佐藤優氏が、この出版社を選んだ戦略的な意図も含め、非常に深い興味を持って読み進むことができた。

結論から言えば、佐藤氏の総合的な実力の高さを、改めて思い知ることになった。

まず、「閣議決定」の文書そのものへの理解の深さが違う。
元来、有能な外務官僚であった著者は、官僚が作成した文書の読み取り方を知悉している。
しかも5回、読み込んだことが、本書で紹介されている。

次に、著者は、国策捜査の対象となって有罪判決を受け、512日間の獄中生活を送った。
国家政権を担う権力者の本性を体感した、貴重な経験の持ち主である。
その鋭敏な嗅覚で、安倍首相がなぜ集団的自衛権という「名」にこだわったかの心理を分析。
祖父である岸元首相の「安保条約」改定の挫折という「トラウマ」という観点から読み解いた。
これは、首相に近いシンクタンクの幹部とのやりとりから、的を射ていると考えられる。

もう一方で佐藤氏は、同志社大学の神学部出身であり、宗教に関する造詣も幅広く、深い。
創価学会の思想や歴史、組織の行動原理に対する理解に関しても、的確である。
特に、牧口初代会長が戦時中、国家による宗派の統合に最後まで反対して殉教し、歴代会長も国家権力と対峙して投獄されたという「体験」を重く見る。
それが、創価学会の「平和主義」を本物にし、公明党がその一線を譲り渡すわけはないとの認識に立っている。

安倍首相の「トラウマ」を受けた自民党と、公明党の譲れない「平和主義」と。
この二つの“ガチの勝負”が自公協議であり、その結果が「閣議決定」となった。
安倍首相が「名」を取り、公明党が「実」を取った。

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