あらかじめ裏切られた革命 (講談社文庫) の感想

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参照データ

タイトルあらかじめ裏切られた革命 (講談社文庫)
発売日販売日未定
製作者岩上 安身
販売元講談社
JANコード9784062649865
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

本書はソビエト連邦崩壊後(92年〜96年)のロシアについての出色のルポルタージュである。
何が凄いって情報の密度、臨場感が圧倒的。著者は当時のロシアの生きるか死ぬかの人々に直接触れており、しかもそれすら材料にして章毎にもっと大きなテーマを描いている。
グルジアのガムサフルディア大統領、チェチェンのドゥダーエフ大統領(共に独立初代大統領)にもインタビューを実施しており、両者ともにロシアの政治工作と日和見主義の国際世論(当時のセルビアについても一部言及がある)、マフィアの脅威に晒される様は悲劇的だ。近年のアラブの春での民主化という流れがあったが、既にソ連崩壊の時点で民主主義の中心に据える基準はなんなのか?(民族なのか?地域なのか?etc)という問題は噴出していたのだなぁと。

ロシア社会について言えば政治家や官僚、軍の汚職、腐敗が進行・・・というと陳腐に聞こえるが、著者の描き出す腐敗したロシア社会の病理は目を覆いたくなるほどで、そこいらのディストピア小説が全然マシに思えてくるほど。この社会では上層部から末端まで腐敗が実質的に容認されており、告発する人間は内部の暴力によって闇に葬られる(軍部だけで年間3万人の変死が!)。こうもシステマティックに社会の腐敗が進めば、個人の勇気や信念、順法精神なんていうものは自分の身を危険に晒す以外の何の意味も持たないだろう。汚職の内容も人道支援から核ミサイルに至るまで大変堂々としており、最早裏でコソコソやるといった日本的な風情は微塵も感じられない…

他にもレーニンは生まれて一度も働いたことがなく(共産主義の父が働いたことがない!)、ロシアの国民を馬鹿にしていたとか、赤軍が開放したアウシュビッツはソ連崩壊まで虐殺者数が水増しされていた(ロシアもユダヤ人虐殺を行っているのに!)等々の小ネタも豊富だ。個人的に気になったのが第13章の「「文明の衝突」の虚実」の章で、極右政党の台頭について書かれた章は現在の日本でも参考になる部分がある。社会の中で常に一定の人間は極右的な政治的信念を持っている、と語るドイツの関係者の言葉は重い。また海外における憧憬型のナショナリストについては英米内で見られる移民二世によるテロの心理的理解の一助になった。

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