創業三〇〇年の長寿企業はなぜ栄え続けるのか の感想

歴史的、文化的側面や独自の経営思想を背景に、"長寿企業"が多数存在している日本。
単純計算で、150社に1社が100年以上の歴史があるというから驚きです。

なかでも、概ね10代以上の経営トップが受け継ぎ、
300年以上の歴史と50億円以上の売り上げを誇る企業を"日本型サスティナブル企業"と定義し、
その繁栄・継続の秘訣に迫るという、ユニークな切り口から経営を捉えた一冊でした。

最も興味深かったのは、長寿企業を支える3つの秘訣からなる経営方程式。

方程式の実現に不可欠なことが10の要素にブレークダウンされていて、
どのような観点で経営を評価すればいいのか、長寿企業になるために
どのようなポイントを意識すればいいのかが、わかりやすく整理されています。

1．"時代"の変化に対応する【身の丈経営】の徹底
【要素】経営スタイル／資本・財務／ガバナンス

2．"世代"の変化を乗り越える【価値観】の伝承
【要素】社長／後継者／社員／ステークホルダー

3．"事業"の変化を推進する【顧客価値】の提供
【要素】コア能力／顧客価値／組織能力

印象的だったことは、長寿企業は、単に歴史や伝統、先行者優位から得られた資源などに支えられているわけではなく、
長期的な視点（経営の哲学）を持ちながら、連続的かつ緩やかな変化を繰り返しながら、
時代の変化に適応してきたということです。

数百年という時間単位で成長を捉えると、杉などの植物（縄文杉は3,000年！）を思い浮かべますが、
強靭な根（価値観）をはり、自然と調和（顧客価値）しながら、急ぐことない成長を確実に遂げる（身の丈経営）ことが
類似しているように感じました。

企業寿命の短命化が言われる近年ですが、植物のような力強い生命力を持った企業が
多数あることに勇気づけられました。