トラウマ恋愛映画入門 の感想

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参照データ

タイトルトラウマ恋愛映画入門
発売日販売日未定
製作者町山 智浩
販売元集英社
JANコード9784087715224
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » エッセー・随筆

購入者の感想

 恋愛オンチのために―――
 そう題された巻頭のことばがすべてを言いつくしています。
 トリュフォーいわく「男はみんな恋愛のアマチュア」(映画『隣の女』)なのだとか。つまり、これは恋愛という魔物をうまく乗りこなすことのできない、永遠の男の子のための書なのです。
 興味深いことに、―と書きつつも、冷静に考えてみれば不思議でもなんでもないことに―映画作家たちは自分たちの恋愛オンチぶりを銀幕に投影する作品を作ってきたということを、著者はひとつひとつ詳らかにしていきます。
 実生活でつきあって別れた女優を主役に抜擢して『チェイシング・エイミー』を撮った監督ケヴィン・スミス。
 ドヌーブら交際相手との間で実際にかわした言葉のやりとりをセリフに織りこんで『隣の女』を作って元カノたちをあきれさせたトリュフォー。
 自らの結婚生活を投影して、妻で女優のジュリエッタ・マシーナと『道』を作り上げたフェリーニ。

 著者はこうした映画作家ばかりでなく、映画の原作小説を書いた作家たちの人生にも切り込んでその恋愛オンチぶりを綴っていきます。戦時中に結んだ不倫関係をモデルに『ことの終わり』を書いたグレアム・グリーンの波乱の人生は読みごたえがありました。

 著者自身、恋愛オンチを自認していて、この本はまさに自分のこれまでのオンチぶりをじっくりと見つめた様子が行間に見て取れます。と同時に、読んでいる私自身も来しかたを振り返って赤面することしきりの読書を強いられた思いが残ります。
 映画の恋愛に学んで自らを矯正する、といけば良いのでしょうが、人生はさほど単純ではありません。これからも男の子たちは数多くの失敗を重ね、女の子たちを傷つけ、そして自らも傷つき続けることでしょう。

 男の私には頷くところばかりの一冊ですが、果たして女性の読者の目にはどんな風に映るのでしょうか。

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